映画の枠を超えた ”カルチャー”に出会える場所「ホワイトシネクイント」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ 2024.2.27
映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪
今回は、渋谷PARCOの8Fに居を構える「ホワイトシネクイント」にお伺いしました。
気づけばこの連載も20回を超え、花柳さんと共にこれまでたくさんの個性あふれるミニシアターへと足を運んできた。その“歴史”や“場”としての魅力、どんな“想い”を胸に映画を届けているのかを伺い読者の方に知っていただくことで、一人でも多くの方がそのミニシアターに興味を示し、実際に足を運ぶキッカケになれば良いと考え、こうして今日も言葉を紡いでいる。が、新たに誕生する映画館もあれば、残念ながら閉館してしまう映画館も相次いでおり、映画業界に携わる一人として無力感に苛まれてしまうこともしばしば……。加速していく映画・映画館離れをどうしたら軽減させられるのか。その一つの可能性を、今回ご紹介するミニシアターの中に垣間見た。2019年11月22日にリニューアルオープンした渋谷PARCOの8Fに居を構える「ホワイトシネクイント」である。
現在の渋谷PARCOが建つエリアにかつて存在した渋谷PARCO part3。その8Fにあった「シネクイント」は、隣接していたシネマライズ(2016年に閉館)などのミニシアターと共に、1980年代から2000年代にかけて渋谷を中心に盛り上がったミニシアターブームの火付け役として数多くのヒット作を上映。2016年のPARCO建て替え工事に伴いシネクイントが移転し(現在は同じ渋谷区内で姉妹館として営業中)、拠点を2つにすることが決定。シネクイントの血統は受け継ぎながらも、「新しい発見、可能性、才能、楽しみ方、そして無限に広がる無垢な場所」という願いが込められた“ホワイト”の名を冠し、「ここは、映画の枠を超えた ”カルチャー”に出会える場所。ここは、新しい発見や新しい可能性が無限に広がる場所。ここは、どんな色にも染まる無垢な場所」というコンセプトのもと、ホワイトシネクイントは産声を上げた。
PARCO 8Fフロアには、ホワイトシネクイントの他にPARCO劇場と「ほぼ日刊イトイ新聞」のギャラリーがあり、階そのものがアート一色。その名の如く白色で統一された劇場ロビーや、上映作品のポスター、フライヤー、スタッフ手作りのポップなどが設置された白い壁面が目を引き、PARCO劇場やギャラリー帰りに足を止める方も多いのだとか。劇場内はスタジアム型のシアターとなっており、デジタル7.1chサラウンド対応。真っ赤なシートが印象的な座席が108席あり、1席ずつ両サイドにひじ掛けが付いているのも嬉しいところ。シネクイント同様にフード類も充実しており、シネクイントにはないフレーバーポップコーンや「東京ホワイト」というクラフトビールなどを販売(仕事にかこつけて飲みましたが、とてもフルーティーで美味しかったです♪)。下階へ降りれば多種多様な店舗で溢れているほか、半券サービスのあるカフェやレストランも種類豊富にあるので、上映前後の時間を持て余した際にはPARCO内を探索・満喫してみるのは如何でしょう。また、ホワイトシネクイントでは物販にも力を入れており、パンフレットのほかに映画の関連商品や書籍、A24の公式グッズなどを多数販売。普通に買い物をするかの如くグッズだけ買って帰るお客様もいるようで、商業施設内にあるミニシアターならではの特色がそこにはある。
支配人の神戸さん(好きな映画は『アンダーグラウンド』。ほかにも名だたる作品を複数挙げていただき、相当な映画好きであることが窺えた)に上映作品に関して話を伺うと、カルチャー感度の高い感性を刺激するような渋谷PARCOを意識した選定となっており、何色にでも染まることのできる無垢なミニシアターであるからこそのバランスに注意を払いながら作品を決めているとのこと。スケボーを通してかけがえのない仲間と出会い成長していく少年の姿を描いた『mid90s ミッドナインティーズ』公開時には、コロナ禍真っ只中にありながらも満席が続出。他館では映画好きであろうお客様が大半を占めていた中、ホワイトシネクイントにはストリート系のスケボー持ったお客様の来場が多かったようで、渋谷という街のカルチャー、PARCOという洗練されたものが集う場所、ホワイトシネクイントが放つ独自の魅力が作品と上手くマッチしたことで客層に違いが生じており、ほかにも『カモン カモン』などのA24作品やウェス・アンダーソン監督作品を上映した際にもそういった傾向が顕著に出ているそうだ。つまり、ホワイトシネクイントでその作品を観ることに価値を抱いている人が多いということである。
PARCO内の他施設との掛け合わせや、その土地に根付くカルチャー色との組み合わせ、PARCOという場所だからこそ自然と成り立つグッズ販売など、単に作品を届けるだけには留まらない新たな映画の届け方を模索し、臨機応変にあらゆる色に染まるホワイトシネクイントの在り方には、映画文化を存続させていくためのヒントや可能性が詰まっているように感じられる。これから5年目を迎えるにあたっての目標を伺うと、「ホワイトシネクイントで観たい」と思ってくださる方を増やしていきたいとのこと。既に達成されているような気もするが、その目標が確固たる形で成された時、ホワイトシネクイントは一体どのような色合いを私たちに見せてくれるのだろう。東京は渋谷へお越しの際は、是非一度渋谷PARCO 8Fにあるホワイトシネクイントへ足を運んでみてください。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪
ここからは、花柳のぞみが「シネクイント」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!」
フォントフェチ花柳、今回もかわいいロゴにきゅんきゅんでした! シンプルだけどぷくっと立体感のあるデザインも良い〜!!
スタッフさんによる手作りポップ!これ、ちょっとわかりづらいけど飛び出てるんです。こういうちょっとした工夫、たまらんです…。
お目目がついたかわいすぎるベル!! なんとこちらはとある映画作品を盛り上げるために使われていたものだとか……! ぜひ当ててみて♪
ポップコーンとドリンクは映画館のオリジナルパッケージ! シンプルで可愛い! ポップコーンは塩味、ハニーバター味、コーンポタージュ味があり、ここでしか食べられないフレーバーも! マストチェックです!!
ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。
花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。
記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル
今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」2月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン2月号(vol.29)、2月5日発行!表紙・巻頭は前田敦子、センターインタビューは東出昌大!
お近くに配布劇場が無いという方、バックナンバー購入ご希望の方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。