昔ながらの映画館の景色を今なお残す「ヒューマントラストシネマ有楽町」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は、有楽町で大人の休日が過ごせる心地の良いミニシアター「ヒューマントラストシネマ有楽町」にお伺いしました。

 20代も折り返しに入った頃からだろうか。中学時代の友人に感化され、高価な靴や服や鞄の類いに興味を抱くようになり、それまで訪れることのなかった“大人”な街へと繰り出す機会が増えていった。その影響も相まって、新宿・渋谷・池袋の映画館を中心とした鑑賞スタイルにも変化が生じ、有楽町・日比谷・銀座の映画館が僕の守備範囲に加わった。30代も折り返しに入った今となってはとうに薄れてしまった感覚ではあるが、そこで目にした『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』『君が生きた証』『カフェ・ド・フロール』『Mommy/マミー』などの作品について思い返す時、少し背伸びした気持ちで劇場へ足を運んでいたあのワクワクソワソワとした感覚がよみがえり、映画館で映画を観るという行為には、図らずとも内容以外(どの劇場で観たのか、誰と観に行ったのか、鑑賞前後に何をしていたのか、その頃何を考えていたのかなど……etc.)の記憶が紐づけられていることを実感する。そんな大人の階段をのぼっていく最中で出会ったのが今回ご紹介する映画館。有楽町駅から徒歩1分、 “大人の休日が過ごせる心地の良い映画館”をコンセプトに掲げるミニシアター「ヒューマントラストシネマ有楽町」である。

 その始まりはHTC有楽町が居を構える有楽町イトシアの開業と同じ2007年。当初は異なる会社が運営しており名称も異なるものであったのだが、2009年より現在の名称へと変わり、テアトル新宿などで知られる東京テアトルが運営を開始。フランスやイタリアなどのヨーロッパ系作品を中心に、大手シネコンなどではお目にかかれない世界各国の話題作や意欲作を多数上映。邦画作品に特化したテアトル新宿や、国内外問わず多種多様な作品を上映するヒューマントラストシネマ渋谷などと明確な差別化が図られている。支配人の浦野さんに話を伺うと、客層はシニア層がメインであり、夜には会社帰りに立ち寄られるお客様が多いとのこと。また、男女比率は女性客が圧倒的に多く、系列の映画館と比較してもその数値はダントツ。有楽町という土地柄や、近隣にマルイ・銀座インズ・GINZA SIXなどの商業施設が立ち並ぶことが起因しているのではないだろうか。

 上映作品同様のヨーロピアンスタイルを取り入れた劇場ロビーには、フードやグッズ販売エリア、フライヤーコーナー、作品評が張り出されたスペースなどが設けられており、目を引く頭上のシャンデリアをはじめ、あたたかみのある装飾や、空間に奥行きを生む大きな鏡が設置されていたりなど、限られた空間ながらも魅力的な場作りがなされている。スクリーン開場時には混雑が予想されるため、ゆったりとロビー内を満喫したい方は少し早めに足を運んだり、イトシアプラザ内のカフェなどを利用するのが吉だろう。劇場のスクリーンは2つあり、シアター1が162席、シアター2が63席。コトブキ社製の座席、クリスティ社製のデジタルシネマプロジェクターを有し、音響は5・1ch。スクリーンサイズの違い以外は、どちらも同じ仕様となっている。会員サービスも充実しており、12もの系列館・提携館で使用することのできる「TGCメンバーズカード」は、年会費1000円でいつでも映画が1400円で鑑賞できるほか、火曜・木曜は1200円。入会時には1200円で鑑賞できる割引チケットも貰えるというお得のかたまりのようなサービスとなっている(上映作品のデザインがあしらわれた期間限定でラインアップされるメンバーズカードもあるため、気になる作品の時に入会するのもオススメ)。

 そして、浦野さんに話を伺っていく中で最も意外であったのが、デジタル社会と言っても過言ではないこの時代において、それも東京の中心エリアに位置するHTC有楽町において、(シニア層のお客様が中心というのも大きいが)上映作品が新聞に載った際の反響が非常に大きく、新聞キッカケで電話問い合わせをしてきたり、足を運んでくださるお客様が多いという点であった。それはつまり、昔ながらの映画鑑賞の図式が今も残り続けているということ。これまた系列の映画館と比較するとHTC有楽町ならではの特徴であり、着任して1年になるという浦野さんご自身も驚いた点であるという。また、「さっき、シネスイッチ銀座に行ってきたよ」「来週は〇〇へ行ってくる」など、気さく話しかけてきてくださるお客様も多いのだとか……。かつての僕がそうであったように、若い世代の方にとってはこれまでとは一味違った“大人”な映画体験ができるのと同時に、古き良き映画文化、昔ながらの映画館の景色(人と人のやりとり)を今なお残すヒューマントラストシネマ有楽町。都内にお住まいの方はもちろんのこと、他県にお住まいの方も、東京は有楽町へお越しの際は、是非一度足を運んでみてください。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「シネクイント」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!」

1. 劇場に入るとパッと目に入るシャンデリア! 『美女と野獣』の世界に迷い込んだのかしら!? と思うような世界観にうっとり……♡

2. フォントフェチ花柳、やっぱりスクリーンナンバーは見逃せません! 洋書のような、お洒落なデザインとフォントですね!

3. 行き止まり!? と思ったら、スクリーン2とお手洗いに向かう細長い通路が! 隠し通路かと思ってワクワクしました。

4. 私、このフライヤーコーナーがなだらかな楕円状に広がっている形がすごくツボなのですが(伝われ……)! ヨーロッパ作品のフライヤーが多くて、眺めているだけで楽しいです♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」11月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン11月号(vol.26)、11月5日発行!表紙・巻頭は森崎ウィン!

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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