世界中の喜怒哀楽にあふれた映画を上映するカルチャーの拠点「シネクイント」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は、映画館がひしめき合う渋谷の街で独自の魅力を放つミニシアター「シネクイント」にお伺いしました。

 ある作品について思い返した時、それが映画館で目にした作品であり、思い入れも深い作品であったのなら、自ずとその作品を観た映画館での出来事や当時の記憶がよみがえる。そんな経験があなたにもないだろうか。僕にとって『SHAME -シェイム-』という作品を思い返す度に自ずと呼び覚まされるのが、今回ご紹介する映画館。渋谷駅から徒歩3分、9つもの映画館がひしめき合う渋谷の街で独自の魅力を放つミニシアター「シネクイント」である。

 その始まりは1999年7月。当時、運営会社であるパルコのエンタテインメント事業として演劇・出版・音楽・アートに関連した拠点が4カ所あり、“5番目”のカルチャー拠点として誕生したのが「シネクイント」(「クイント」とは、ラテン語で「5番目」の意味)。ヴィンセント・ギャロが監督・脚本・主演・音楽を務めた『バッファロー'66』がオープニングを飾り、カルト的人気を誇った同作は、7カ月にも及ぶロングランヒットを記録。隣接していたシネマライズ(2016年に閉館)などのミニシアターと共に、渋谷を中心に盛り上がったミニシアターブームの火付け役として数多くのヒット作を上映(公式HP内に過去の上映作品を網羅したアーカイブがあるので要チェック!)。当初は、現在の渋谷PARCOが建つエリアに存在した渋谷PARCO part3の8階に居を構えていたものの、建替え休業のため2016年に一旦休館。2年の空白の後、2018年に閉館した渋谷シネパレス跡地へと移転する形でリニューアルオープンしたのが、今日の“二代目”シネクイントである。

 オープン当初から「世界中の喜怒哀楽(エンタテインメント)を お届けします。」をコンセプトに掲げ、新しいモノや価値観に興味を示す感度の高い方や、多様なカルチャーが混在する渋谷という街のカラーに合わせ、国・ジャンル・作品規模に囚われることのない多種多様且つ良質な作品を上映。中でも音楽映画に力を入れており、「PARCO音楽映画祭」という独自企画も開催。邦画作品などの舞台挨拶やイベント上映も頻繁に行われている。2019年には姉妹館「ホワイトシネクイント」が渋谷PARCO内にオープン。A24などのエッジが効いた作品やカルチャー色が色濃い作品を中心に上映。

 井の頭通り沿いに面した渋谷三葉ビルの6・7階に2つのスクリーンを有するシネクイント。赤いシートが印象的な座席がそれぞれ162席、115席あり、7Fのスクリーン1には渋谷の映画館で唯一となるペアシートが設けられている。支配人の大橋さん(映画に目覚めたキッカケは『スター・ウォーズ』シリーズとのこと)曰く、カップル客の利用が多いのはもちろんのこと、座り心地の良いソファ席を求めておひとり様で利用されるお客様も多いとか。また、1席ずつ通常料金で利用できるため、ペアシートを選ぶことでプラス料金がかからない点も嬉しいところ。そのほか、毎週水曜日のサービスデー(男女共に割引)、毎月22日のカップルデー、パルコカード割引、スタンプカードなど、映画をお得に楽しめるサービスが盛りだくさん。広々とした7Fロビーには座席が複数設けられてあり、映画やアート・カルチャー系のフライヤーが多数設置されているため、上映前後の時間も有意義に過ごすことができる。そして、大橋支配人が力を入れているというコンセッションでは、定番のポップコーンをはじめ、ヨーロッパのカフェブランド「COSTA」のコーヒーやカフェラテ、新潟県魚沼市に製造所を構える「HUSKY」のジェラート、こだわりのクラフトビール(ブルックリンラガー/よなよなエール)など、ちょっと大人なフードが多数取り揃えられており、ほかの映画館では体験できない一味も二味も違った映画鑑賞の時間を提供している。

 ありとあらゆる娯楽が増え、配信主流の世の中となった今、映画業界や映画館を取り巻く環境は大きく変化した。悲しいかな、かつてのミニシアターブームのようなムーブメントを再び起こすのは至難の業かもしれないが、オープン当初から掲げるコンセプトはそのままに、お客様に映画を楽しんでいただけるようさまざまな創意工夫を凝らし、映画館で映画を観ることの価値や特異性を知っていただけるよう、シネクイントでは今日も世界中の喜怒哀楽にあふれた映画が上映されている。都内にお住まいの方はもちろんのこと、他県にお住まいの方も、東京は渋谷へお越しの際は、是非一度シネクイントへ足を運んでみてください。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「シネクイント」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!」

1. 「SCREEN2」の下の矢印、幾何学模様がかわいい!シンプルながらもお洒落だから目を引いちゃいます。

2. 「ゴミ箱が壁に埋め込まれてるうぅぅ!」とついつい声が出ちゃった(笑)。このちょこんとした感じがカワイイなって思ったのです。

3. シネクイントにはフライヤーコーナーがいくつかあります。映画やアートイベントのものなど、種類豊富で楽しい! ぜひチェックしてみて♪

4. 売店のビールとアイスを堪能する私たち。こだわりのクラフトビールと、シーズン毎に新しいフレーバーを楽しめるアイスは、映画を楽しむために必需品です♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」8月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン8月号(vol.23)、8月5日発行!表紙・巻頭は横浜流星、センターインタビューは中島歩!

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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