中島歩「不安こそがモチベーションに繋がっている」 『さよならエリュマントス』インタビュー

DOKUSOマガジン編集部

ミスマガジン2022の受賞者6名を主演に迎えた映画『さよならエリュマントス』。大野大輔監督による本作は、崖っぷちに立たされたチアリーダーたちの奮闘を描いたものだ。問題アリのマネージャー・宍倉役を演じた中島歩は、シビアでユーモラスな会話劇が展開する大野ワールドを堪能したという。そんな彼に現場のことだけでなく、自身の演技の方法論まで語ってもらった。

野大輔監督の「観る者を惹き込む特異な力」

──出演の経緯を教えてください。

中島「『さいはて』という映画でご一緒した山口幸彦さんや、ここ数年いくつもの作品でご一緒している直井卓俊さんがプロデューサーということで、出演までの流れは自然なものでした。もちろん、一番大きな出演の決め手は大野さんの作品だということです。前作の『辻占恋慕』に魅了されていたんですよね。特別に珍しい話を描いているわけではないのに、観る者を惹き込む特異な力がある。年齢が近いということもあって、大野さんとやってみたかったんです」

──本作において中島さんは特殊な立ち位置のように思うのですが、企画の概要に目を通してみていかがでしたか?

中島「主演の6人がそんなにお芝居の経験があるわけではないと聞いていたので、正直なところ心配はありました。彼女たち自身も不安だったでしょうし、かといって僕は支えてあげられるようなタイプでもないので(笑)。だからお芝居そのもので引っ張っていくというか、背中を押すことができたらと思っていました。それに、そもそも脚本が彼女らへの当て書きで、役には個々のパーソナリティが反映されています。実際に現場をともにしてみて、彼女たち一人ひとりの魅力が作品の魅力に繋がっていくのを感じていました」

──脚本を読んでみていかがでしたか?

中島「すごく入っていきやすいものだと感じました。僕自身は特別な“推し”がいるわけではありませんが、世の中の多くの人が誰かのことを応援して見守っていますよね。たとえば、ステージに立つアイドルの方たちは、それぞれに不安や焦りを抱えながら闘っていると思うのですが、それはその行く末を見守る側も同じなのではないのかなと。このことがそのまま脚本に反映されていると感じました。でもこれって、ともすれば何の引っかかりもない映画にもなりかねませんよね。“アイドルの奮闘記”ってよくある話ですから。ですがそこはやっぱり大野さんの脚本なんですよ。彼の個性がセリフの隅々にまで刻み込まれています」

この記事の続きを読むには

画像3枚、約1100文字

新規登録はこちら

中島歩
なかじまあゆむ|俳優
1988年10月生まれ、宮城県出身。美輪明宏主演舞台『黒蜥蜴』雨宮潤一役に選ばれ、2013年俳優デビュー。2014年にNHK連続テレビ小説「花子とアン」でテレビドラマに初レギュラー出演。2015年公開の初主演映画『グッド・ストライプス』で第7回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞。2023年は映画『恋のいばら』、『銀平町シネマブルース』などの出演作が公開されたほか、出演した新作映画『17歳は止まらない』(8月4日)、『さよならエリュマントス』(8月11日)、『スイート・マイホーム』(9月1日)の公開が控えている。

『さよならエリュマントス』
監督・脚本 / 大野大輔
出演 / 瑚々、咲田ゆな、麻倉瑞季、斉藤里奈、三野宮鈴、藤本沙羅、中島歩、⽶本学仁、豊⽥ルナ、川瀬陽太、平井亜⾨、⽥中爽⼀郎
公開 / 8月11日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他
© 「さよならエリュマントス」製作委員会

元々は甲府の社会人野球チーム“エリュマントス”のチアリーダーだったココ(瑚々)、ユナ(咲田ゆな)、ミズキ(麻倉瑞季)、リナ(斉藤里奈)、スズ(三野宮鈴)、サラ(藤本沙羅)はマネージャーの宍倉(中島歩)に連れられて地方の催事場などでのイベントに出演させられ、あちこちでドサまわりさせられている。そんな最底辺の地下アイドルのような活動をさせられているメンバーたちと宍倉は喧嘩が絶えず、溝が深まるばかり。とある日、またイベント参加のため山梨の温泉街にたどり着いたエリュマントスチームだったが、宍倉の不用意な発言から無用なトラブルに巻き込まれてしまい……。

撮影 / 池村隆司・文 / 折田侑駿 ヘアメイク / NEMOTO

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」8月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン8月号(vol.23)、8月5日発行!表紙・巻頭は横浜流星、センターインタビューは中島歩!

お近くに配布劇場が無いという方、バックナンバー購入ご希望の方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。

DOKUSOマガジン編集部 編集部

DOKUSOマガジン編集部のアカウントです。

この連載の人気記事 すべて見る
今読まれてます RANKING