染谷俊之×吉田美月喜、初共演で語る互いの印象 『パラダイス/半島』インタビュー

DOKUSOマガジン編集部

伊豆半島を舞台に、男女三人の奇妙な共同生活を描いた『パラダイス/半島』。淡々と物語が展開していくものの、静けさと不穏さが同居した独特な作品だ。稲葉雄介監督のこだわりが随所に感じられるこの作品の世界に、主演の染谷俊之と吉田美月喜はどのように臨んだのか。これが初共演となった二人に制作の裏側を語ってもらった。

演の経緯と心境

染谷「僕は稲葉監督とは前作『恋するふたり』に続いて二度目のタッグになります。僕が作品の中心に立つことが前提でスタートした企画なので、こんなふうに映画の核となる部分に関わらせていただけることに幸福を感じていました。『恋するふたり』の現場では、さまざまな面で監督と価値観が合ったんですよね。特別に何かを語り合ったりしたわけではありませんが、ワンカットを撮るごとにそう強く感じていたんです」

吉田「稲葉監督からお声かけいただいたのですが、私のこれまでの活動を追ってくださっていたみたいで。数年前に初めてレギュラー出演したドラマ『レイメイキ』(フジテレビ系)で私のことを知ってくださってからというもの、映画も舞台もほとんどすべての出演作をご覧になっているらしいんです。そんな流れがあってのオファーだったのでとても嬉しかったですね。監督はとても話しやすい方で、ちゃんと目を見て私の言葉を聞いてくださいます。対話をしながら撮影ができそうだと思いました」

白だらけの脚本の印象

染谷「この作品って、波があるものではありませんよね。半島での生活を描いていながらも、写実的で生々しい。脚本を読んで浮かび上がった光景が、完成した映画にそのまま焼き付けられていました。これはやはり一度タッグを組んでいるというのは大きいですし、僕たちの価値観が合うことも影響していると思います。本作は説明的な部分を排除して、細部を具体的に描いていなかったりもしますが、それでも半島での生活が見えたんですよ。それに僕は説明的なものや具体的な描写が排されているところこそがいいなと。映画をご覧になる方々の想像力をかき立てる作品になっていると思います」

吉田「本当に余白だらけなんですよね。出来上がった映画を観てもそう感じるくらいですから。染谷さんが演じる真英と私が演じる夕起は叔父と姪の間柄ですが、この関係性である必然的な理由も描かれませんしね。脚本の時点で分からないことだらけだったのですが、あまりにも疑問が多いので監督には逆に何も聞けませんでした(苦笑)。それと同時に、これは実際に現場に立って、夕起という人間として生きてみてようやく掴めるものがあるはずだとも思いました。そういう意味では撮影が楽しみになる脚本でしたね。監督の人柄や染谷さんの存在もあるので、不思議と不安はありませんでした」

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染谷俊之
そめやとしゆき|俳優、声優
1987年12月17日生まれ、神奈川県出身。2008年より俳優として活動をはじめ、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、『MANKAI STAGE『A3!』ACT2!』シリーズなど、幅広いジャンルの舞台に出演。映像作品の主な出演作に、映画『恋するふたり』『ゲネプロ★7』、テレビドラマ「あいつが上手で下手が僕で シーズン2」(日本テレビ系)、「美しい彼」シリーズ(MBS/TBSドラマイズム枠)がある。近年では「HUGっと!プリキュア」などのアニメ、外国映画、ゲームで声優としても活躍の幅を広げている。

吉田美月喜
よしだみづき|俳優
2003年3月10日生まれ、東京都出身。スカウトがきっかけで芸能界入り、初めて受けたオーディションで大手企業の広告に抜擢。その後、Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」、TBS日曜劇場「ドラゴン桜」など話題作に出演。2023年は、主演映画『あつい胸さわぎ』、ドラマ「沼る。港区女子高生」(日本テレビ系)「クライムファミリー」(フジテレビ系)にてメインを務めているほか、舞台『モグラが三千あつまって』、映画『カムイのうた』などの主演作品を控えている。

『パラダイス/半島』
監督・脚本 / 稲葉雄介
出演 / 染谷俊之、吉田美月喜、立川かしめ、松村龍之介、西村季里子、谷川愛梨、藤田朋子
公開 / 7月21日(金)より池袋HUMAXシネマズ 他
©2023「パラダイス/半島」製作委員会

有名俳優・真英(染谷俊之)は、積年の疲労を癒すため、畑付きの一軒家で長期休養中。ゆとりある暮らしのおかげで、今では心身共にだいぶ回復を果たした。新しい大作映画への出演も決まり、完全復帰も間近な彼の元に、突然親友の竜(立川かしめ)が訪ねて来る。彼は、とある事件の冤罪で逮捕・勾留されている。真英の紹介した弁護士と奮闘するも、結局起訴されることとなり、逃げてきたのだと言う。立場上そんな竜と関わりたくない真英は、彼を一晩だけ匿い、外に追い出す。翌朝、暇を持て余した姪の夕起(吉田美月喜)が真英の家に滞在しに来る。何も知らない彼女は、浜でばったり出会った竜と意気投合し、彼を連れ戻してしまう。心穏やかに暮らしたい真英の、憂鬱な日々が始まるーー。

撮影 / 西村満 取材・文 / 折田侑駿 ヘアメイク / 中元美佳 スタイリスト / 岩田友裕

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」7月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン7月号(vol.22)、7月5日発行!表紙・巻頭は清原果耶、センターインタビューは染谷俊之×吉田美月喜!

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