『マイム マイム』 恋・家族・人生こじらせ中

ミヤザキタケル

『グッド・ストライプス』『あのこは貴族』などで知られる岨手由貴子監督初となる長編作品。本作をご覧になる前に、ぜひ岨手監督のPFF2005入選作品『コスプレイヤー』をご覧頂きたいのだが、あの時点で垣間見えていた才能の片鱗が、3年の時を経て、大いに開花していることが本作を通して伺える。(『コスプレイヤー』にて主演を務めていた安田里子さんが、主人公の姉役として出演している点も要チェック!)

およそ不合理で、自分の思い通りにはいかない。たとえ良くない関係や状態に陥っていると分かっていても、容易には抜け出せない。割り切れない。諦め切れない。人それぞれな部分も大きいと思うが、そんな恋の一つや二つ、誰にだって経験があるのではないだろうか。

学生時代の先生と関係を持ち、家族や友人とは一定の距離を保ち、美容師を辞めてサクラのバイトをしながら日々を生きている主人公・マコト。ひょんなことから幼馴染みの男の子と再会し付き合うことになるのだが…。というのが、大まかなストーリーの流れであるのだが、その描き方がとにかく魅力的。

カテゴリーとしては恋愛映画に区分されるのだろうが、今あなたが思っているそれとは少し感覚が異なるはず。キュンキュンすることも、胸が高鳴ることも、こんな恋がしたいなぁと思うことも、きっとない。でも、どこか身に覚えのある感覚が、誰もが生きる日常の温度感が、この作品の中には宿っている。等身大の人間模様が、容易く割り切ったり解決することのできない感情の渦が、とても生々しく。それらを描くことができるのが、岨手由貴子という監督であり、後の作品においても見受けられる上質な人間ドラマへの連なりを感じ取れる一本となっている。

©岨手由貴子

ミヤザキタケル 映画アドバイザー

WOWOW、sweetでの連載のほか、各種メディアで映画を紹介。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』がバイブル。

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