『コスプレイヤー』 誰もがしてる心のコスプレ

ミヤザキタケル

『グッド・ストライプス』『あのこは貴族』などで知られる岨手由貴子監督が、大学在学中に製作した短編作品。そのタイトルから、アニメキャラなどのコスプレをする人の物語をイメージしてしまいがちだが、目にすることになるのは、同じコンビニで働く男女の会話劇。

コスプレをしているシーンなど一切出てこない。それでは、一体何故『コスプレイヤー』なのか。仕事をしている時の自分、見知らぬ他人と接する時の自分、親しい友人といる時の自分、恋人といる時の自分、一人でいる時の自分。誰もが状況に応じて自分を使い分け、接する相手によって態度や応対を変えている。

それを劇中において「コスプレ感覚」と称しているのが、タイトルの意味するところ。そして、その独自の感性から生まれ出づる表現に、妙に納得させられてしまうのが本作に宿る魅力。

そういった人の心の捉え方や表現は、近年の岨手監督の作品においてもより昇華した状態で見受けられるため、その才能や進化(深化)の過程を垣間見ることができるのと同時に、人と関わることの奥深さや難しさを堪能・痛感できる一本になっている。

©岨手由貴子

ミヤザキタケル 映画アドバイザー

WOWOW、sweetでの連載のほか、各種メディアで映画を紹介。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』がバイブル。

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