毎熊克哉×松居大悟監督 対談後編ー2人が明かす創作の原点

毎熊克哉

映画はみんなでつくるものだという認識をいまではより強く持っています──毎熊克哉

誰かと一緒になって取り組むモノづくりが好きなんだと思います──松居大悟監督

毎熊「最新作『不死身ラヴァーズ』が公開中の松居大悟監督との対談の後編です。前編では新作のお話を中心に、松居さんが作品づくりをするうえで重要視していることや、物語を描くことにおいて大切にしているものなどについてお話ししました。映画、ドラマ、演劇にと、いろんな領域でさまざまなジャンルの作品を手がけていますが、創作の原点は漫画だったんですよね?」

松居「漫画家になるべく描いていたのが創作のはじまりです。でも大学に入って、ひとりで描き続けるのが寂しくて挫折して……。そんな頃に演劇に出会いました。演劇なら誰かと一緒になって画をつくることができる。他者との関係性ありきの創作って面白いなと。さらには映画だったらもっと具体的に画を構築できることに気がつきました。このような経緯があって現在に至ります。自然な流れなので、各領域やジャンルを横断している意識はありません。ただアウトプットの方法が少し違うだけ。映画もドラマも演劇も、僕としては根本は同じ。もっと風通しが良くなれば、みんなが自由に横断できるようになると思います」

毎熊「同じことを語るにしても、アウトプットの手段がいくつもあるのはいいですね。前編のときに松居さんは、カテゴライズされてしまう前に、意識的にそこから抜け出すようにしていると言っていました。僕も役者として同じような感覚を持っています。一度開けた引き出しは、できれば簡単には開けたくない。得意な演技の使い回しをしていてはダメだと思うんです。似た役どころでオファーするほうが安心できるというのはもちろん分かりますけどね。なので、演じているところを想像できないような役のご依頼が来ると、これはチャンスなのだと感じるようになりました」

松居「次に何をやるのか読めない人というのは魅力的ですよね。何かひとつのことを突き詰めるのも素晴らしいですが、それはできそうにない。ジャンルに括れない作品を作りたいです。僕はこれまでの経験から、何かをエネルギッシュに描くスタイルから、情報をどんどん削ぎ落としていく引き算の演出スタイルに変わってきました。でも新作の『不死身ラヴァーズ』はかなりエネルギッシュな作品になっています。なのでそろそろ、一見すると何も起きていないように思えるけれど、確実に何かが起きている、みたいな作品に挑んでみたいんですよね」

毎熊「何も起きていないようで、何かが起きている……気になりますね。テレビドラマではなく映画じゃないと成立しないでしょうし、僕もやったことがない気がするので、撮る際はぜひ呼んでください。ただそこに立っているだけで何かを伝えられるようになりたいという思いがあるんです。いまは足してみたり引いてみたり、とにかくいろいろ試している段階で、何かやらないと何も伝わらないのではないかという不安から、けっきょく何かしらやってしまうんです。監督と役者の狙いが合致すれば、うまくいくのかもしれませんね。僕はもともと映画の現場のトップである監督志望でしたが、映画はみんなでつくるものだという認識をいまではより強く持っています。松居さんは役者が入口ですよね?」

松居「自分が出るためにつくりはじめました。僕も、映画は総合芸術であり、みんなでつくるものという認識です。漫画家を目指して挫折した話もそうですが、やっぱり誰かと一緒になって取り組むモノづくりが好きなんだと思います。自分にないアイディアがチームで生まれて、それをみんなで共有しながら思ってもないような形になっていく。いまの僕にとって映画とはそういうものですね。画面の中で何もしない毎熊さんも面白そうですが、“うたのおにいさん”みたいな役も見てみたいな(笑)」

毎熊克哉
まいぐまかつや|俳優
1987年3月28日生まれ、広島県出身。2016年公開の初主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第31回高崎映画祭最優秀 新進男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は『生きちゃった』、『マイ・ダディ』、『猫は逃げた』、『そして僕は途方に暮れる』、『世界の終わりから』。出演するドラマ『好きなオトコと別れたい』が、U-NEXTにて配信中。

松居大悟
まついだいご|映画監督
1985年11月2日生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。2012年、『アフロ田中』で長編映画初監督。『バイプレイヤーズ』(テレビ東京)シリーズを手掛けるほか、J-WAVE「RICOH JUMP OVER」ではナビゲーターも務める。映画『ちょっと思い出しただけ』がファンタジア国際映画祭2022で部門最高賞となる批評家協会賞、第34回東京国際映画際にて観客賞とスペシャルメンションを受賞。最新監督作『不死身ラヴァーズ』が5月10日より劇場公開中。

『不死身ラヴァーズ』
監督 / 松居大悟
脚本 / 大野敏哉、松居大悟
出演 / 見上愛、佐藤寛太、落合モトキ、大関れいか、平井珠生、米良まさひろ、本折最強さとし、岩本晟夢、アダム、青木柚、前田敦子、神野三鈴
公開 / 全国劇場にて公開中
©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社

撮影 / 加藤尚一郎 取材・文 / 折田侑駿

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DOKUSOマガジン5月号(vol.31)、5月5日発行!表紙・巻頭は福士蒼汰、センターインタビューは藤原季節×義山真司×林知亜季監督!

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毎熊克哉 俳優

1987年3月28日生まれ、広島県出身。2016年公開の初主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017新人男優賞、第31回高崎映画祭最優秀新進男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は『生きちゃった』、『マイ・ダディ』、『猫は逃げた』、『妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪』、『ビリーバーズ』。三浦大輔監督の『そして僕は途方に暮れる』が公開中。

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