山田杏奈「役として懸命に生きることが使命だと思っています」『山女』インタビュー 2023.6.26
多くの映画人から愛される気鋭俳優・山田杏奈を主演に迎え、福永壮志監督が手がけた『山女』。柳田國男の『遠野物語』に着想を得て誕生した本作は、18世紀後半の東北にある山村を舞台に、現代にも通じるさまざまな問題を照射した意欲作だ。食糧難や差別に苦しみ、やがて山の中で初めて自由を知る少女・凛を演じた山田に、本作の製作の裏側を語ってもらった。
物語の持つ痛ましさ
──出演が決まった際の心境を教えてください。
山田「国際共同製作の作品ということで、果たしてどんなものになるのだろうと、うまく想像ができませんでした。でも脚本を読むと、日本特有の土着的なものを描きながらも、様々な視点が取り入れられている作品なのだと分かったんです。とても興味を引かれましたね」
──脚本を読むことで景色が見えてきたと？
山田「映像になったものを観てようやく分かることが多かったです。逆のことを言えば、文章だけだと私にはうまくイメージができなかったのですが、脚本だと、自然やそこに息づく人々の力強さよりも、この物語の持つ痛ましさの方が印象に残ったんです。実際に現場に立って演じてみることで見えてくるものが本作の場合は圧倒的に多かったですね」
──本作は『遠野物語』に着想を得て生まれたもののようですね。
山田「私自身、こういった日本の民話に詳しくありませんでした。福永監督からは“『楢山節考』を観て”と言われて、それが本作に挑むうえでの入口になりましたね。福永さんはアメリカでずっと活動をされてきた方で、人種的なルーツというものをとても大切にされている印象がありました。日本の過去の時代背景にあのような悲しいことがあったこと私はをよく知りませんでしたし、これまであまり考えてこなかったことを突きつけられているようでした」
──民話的でありながら、現代にも通じるテーマ性を持った作品だと感じました。凛というキャラクターにはどんな印象を持ちましたか？
山田「凛の人生を描いたこの物語が現代にも通じるものなのだという感想は、本当に多くの方からいただいています。でも私自身としては、凛があの時代に生きた一人の女性であることを何よりも大切にしたいと思っていました。なので、いまの時代に生きる自分と比較をしたりすることもありません。彼女は純粋な一人の若い娘というわけではなく、あの村社会における立場や役割を強いられている女性です。けれども山に入って初めて、彼女は自分自身として生きられることを知ります。現代のこの社会でも似たような環境に置かれている人々は多いはずです。脚本を読んで、実際に演じ、映画を観ていただく。こうして映画が作られて上映される一連の流れの中で、このことを強く実感しています」
山田杏奈
やまだあんな｜俳優
2001年1月生まれ、埼玉県出身。2011年『ちゃおガール☆2011 オーディション』でグランプリを受賞しデビュー。2018年『ミスミソウ』で映画初主演。2019年『小さな恋のうた』第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。その後数多くの映画・ドラマに出演する。2022年は、ドラマ「未来への10カウント」（テレビ朝日系）「17才の帝国」（NHK総合）「新・信長公記～クラスメイトは戦国武将～」（読売テレビ・日本テレビ系）「早朝始発の殺風景」（WOWOW）等、話題作に多数出演、また初舞台『夏の砂の上』へ出演を果たしている。
『山女』
監督 / 福永壮志
脚本 / 福永壮志、長田育恵
出演 / 山田杏奈、森山未來、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでん、永瀬正敏
公開 / 6月30日（金）よりユーロスペース、シネスイッチ銀座 他
©YAMAONNA FILM COMMITTEE
この山でわたしは人間になれたーー。18世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされながらも逞しく生きる凛（山田杏奈）。彼女の心の救いは、盗人の女神様が宿ると言われる早池峰山だった。ある日、凛の父親・伊兵衛（永瀬正敏）が村中を揺るがす事件を起こす。家を守るため、村人達から責められる父をかばい、凛は自ら村を去る。決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越え、山の奥深くへと進む凛。狼達から逃げる凛の前に現れたのは、化け物なのか人間なのかもわからぬ不思議な存在であった……。
撮影 / 西村満 取材・文 / 折田侑駿 スタイリスト / 中井彩乃 ヘアメイク / 横山雷志郎（Yolken）
今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」6月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン6月号（vol.21）、6月5日発行！表紙・巻頭は光石研、センターインタビューは山田杏奈！
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