毎熊克哉×竹林亮監督ー『14歳の栞』と『MONDAYS』の感動の秘密

毎熊克哉

撮影 / 西村満 スタイリスト / 山川恵未 ヘアメイク / 木内真奈美(OTIE)

毎熊「僕がこれまでに出会い、影響を受けた映画を中心にお話ししてきた連載企画ですが、これからは僕の方から出会いに行こうということで。僕にとって宝物のような映画になった『14歳の栞』と、衝撃的な面白さだった『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の竹林亮監督の元にやってきました。前者はドキュメンタリーですが、後者はフィクションですよね。二つはまったく異なる作風の映画ですが、どちらにも似た感動がありました。その秘密として、竹林さんの人柄があるのかなと。映画に興味を持ったのはいつ頃のことですか?」

竹林「小学2年生くらいのときに、映画館で『ホーム・アローン』を観たのがきっかけですね。それからは月に一度、父に映画館に連れて行ってもらうようになったんです。新聞に掲載される映画のスケジュールを切り取ってはファイリング。パンフレットもチラシもすべて大切に保管し、公開前の洋画のサントラを手に入れては聴き込む。そんな子ども時代を過ごしていましたね。なので小学校の卒業文集の時点で将来の夢は映画監督だと書いていました。自分の撮った映画が金曜ロードショーで放映される未来を夢想していたんです」

毎熊「その頃からすでに映画監督への道を歩み出したわけですね。『14歳の栞』は実在する中学2年生の生徒たちに密着したドキュメンタリー作品ですが、撮影の裏側を想像するとすごく大変そうだなという印象があります。14歳というと繊細な時期ですから。でも映画を観ると、みんな変に構えることもなく自然体ですよね。それでいて作品全体に波があって、一本の映画として成立しているのがすごいなと感じました」

竹林「学級というコミュニティに僕らのような異物が入っていくわけですから、生徒のみなさんがこちらを意識しないわけがない。どうすれば馴染むことができるのか試行錯誤しました。とはいえ、撮影部にしろ録音部にしろ、自分のやるべき仕事をしなくちゃ成り立たない。まずはリラックスした空気を共有し、その場にいる全員の視点を合わせることを重要視していました」

『14歳の栞』©︎CHOCOLATE Inc.

毎熊「同じ目線に立って見つめた彼/彼女らのこと、僕は忘れられないですね。 一人ひとりに愛着が湧きましたし、自分が中学2年生の頃のことを思い出しながら感動していました。そして、その次に手がけた映画が『MONDAYS』。タイムループして同じ一週間を繰り返し続ける人々の姿を描いた、これまた面白いアイデアの作品ですが、前作とはまったく違う。でも同じような感動があったんですよ。僕自身、代わり映えしない日常から抜け出さなければと焦っていた時期がありました。自分の夢や、本当の生きたい姿についてもっと考えてもいい。そんな優しいメッセージを本作からは受け取ったんです」

『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』©︎CHOCOLATE Inc.

竹林「『MONDAYS』はもともとオンライン上での公開を想定した短編の企画でした。でも内容を膨らませていくうちに3時間くらいの尺の脚本になった(笑)。それをできるだけ削って“中編”だと言い張って撮影に入ったところ、劇場公開できる可能性が出てきたんです。そのような流れもあって、現実的に映画館で上映できる尺にたどり着きました。物語に関しては、社会人である僕らにとって一番“あるある”だと共感できるところを形にしていきました。月曜日から一週間が始まって、大忙しのまま、また月曜日がやってくる。ただただ繰り返すだけの日々から抜け出せない、あの感覚。上映先も配信先も分からない段階でオファーを受けてくださったキャストのみなさんには本当に感謝しています」

毎熊「出演者の誰もが素敵でした。次にフィクションの映画を撮る際、俳優が必要なときはぜひ呼んでください」

竹林「言いましたね(笑)!」

毎熊「本気です。よろしくお願いします!」

毎熊克哉
まいぐまかつや|俳優
1987年3月28日生まれ、広島県出身。2016年公開の初主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017新人男優賞、第31回高崎映画祭最優秀 新進男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は『生きちゃった』、『マイ・ダディ』、『猫は逃げた』、『ビリーバーズ』、『そして僕は途方に暮れる』。最新作『世界の終わりから』(紀里谷和明監督)が現在公開中。

竹林亮
たけばやしりょう|映画監督
CM、YouTubeコンテンツ、リモート演劇、映画等、表現は多岐にわたる。監督・原案・共同脚本を務めた、あさぎーにょ主演のYouTube短編映画「ハロー!ブランニューワールド」(動画名:もう限界。無理。逃げ出したい。)は国内外で5500万回以上再生され、多数受賞。すべての工程をインターネット上のみで仕上げたリモート演劇「Bestfriends .com」はメディア芸術祭の審査員推薦作品に選出された。2021年に公開された青春リアリティ映画『14歳の栞』は1館のスタートから45都市まで拡大上映。2022年に公開した『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(監督・共同脚本)はスマッシュヒットを記録した。

『14歳の栞』
監督 / 竹林亮

『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
監督 / 竹林亮
出演 / 円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、髙野春樹、島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
DVD&Blu-ray発売中

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」6月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン6月号(vol.21)、6月5日発行!表紙・巻頭は光石研、センターインタビューは山田杏奈!

お近くに配布劇場が無いという方、バックナンバー購入ご希望の方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。

毎熊克哉 俳優

1987年3月28日生まれ、広島県出身。2016年公開の初主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017新人男優賞、第31回高崎映画祭最優秀新進男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は『生きちゃった』、『マイ・ダディ』、『猫は逃げた』、『妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪』、『ビリーバーズ』。三浦大輔監督の『そして僕は途方に暮れる』が公開中。

この連載の人気記事 すべて見る
今読まれてます RANKING