総合プロデュース・本宮泰風×主演・伊藤健太郎というタッグのはじまり『静かなるドン』インタビュー

DOKUSOマガジン編集部

これまで数々の映画やドラマが製作されてきた『静かなるドン』。その“令和版”となる作品が、総合プロデュースを本宮泰風が務め、主演に伊藤健太郎を迎えて誕生した。伊藤に対して「これまで静也を演じてきた方々とは俳優として持っているものが違う」と感じていた本宮と、「いまの時代ならではの主人公・静也像を作り上げてみたい」と意気込んでいた伊藤。そんな二人に製作の裏側を語ってもらった。

健太郎はこれから年齢を重ねていけばさらに魅力的になるタイプの俳優だと思います。──本宮泰風

静也を演じる俳優としても、この現場に参加する一人の人間としても、泰風さんはとても心強い存在でした。──伊藤健太郎

合プロデュース・本宮泰風 × 主演・伊藤健太郎というタッグのはじまり

本宮「これはマンガを原作とした作品ですが、ジャンルはいわゆる“任侠もの”です。僕はこの手の多くの作品に関わってきたので、今回は監修する立場として、脚本作りの段階から参加しました。『静かなるドン』はこれまでに数多くの映画やドラマが製作されていて、数々の名優が主人公の静也を演じています。作品ごとにそれぞれのカラーがあるので、それらのイメージと被らない主演俳優は誰かとなったときに、健太郎に白羽の矢が立ったんです。主演は作品の顔ですから、これまで静也を演じてきた方々とは俳優として持っているものが違う存在を求めていたんです。今作の静也のキャラクターは健太郎への当て書きですし、彼を中心に配役も決まっていきましたね」

伊藤「嬉しいです。『静かなるドン』は世代的にこれまでちゃんと触れる機会がなかったのですが、とてもギャップが面白い作品なのだと分かりました。シリアスなアクション要素があれば、コメディの要素もあります。ぜひとも令和の時代ならではの静也像を作り上げてみたいと、挑む気持ちで参加させていただきました。この作品に限らずですが、現場に入る際はガチガチに作り込み過ぎないようにしています。お芝居というものは場所や相手の存在によって変わってきます。ヤクザ役は今回が初めてだったので、先輩俳優陣とのやり取りを楽しみつつ、新鮮な気持ちで取り組んでいました」

優の道を選んだ、お互いの印象

伊藤「泰風さんは、とにかく広い視野を持った方です。現場に入る前も入ってからも、本当に細かなところにまで目を向けていて、作品がより良いものになるように気を配っている。具体的なところだと、ヤクザの世界を描くために必要な独特の所作に関してです。経験豊富な泰風さんから学ばせていただきましたね。それにアクションシーンでは、泰風さんはただ立っているだけで迫力がすごいんです。スキがないんですよ。静也を演じる俳優としても、この現場に参加せていただく一人の人間としても、とても心強い存在でした」

本宮「最初は健太郎のことを生意気なガキかと思っていたのですが(笑)、すごく気が遣える人間で、作品の関係者の誰もが彼のことを好きになっていくのが分かるんですよね。それはそのまま、本作の魅力の一部として画に反映されています。健太郎のそういった振舞いは、努力してやれるものではないと思います。つまりは彼が生まれ持った特別な性質。いまももちろん素敵ですが、これから年齢を重ねていけばさらに魅力的になるタイプの俳優だと思います。だからとにかく続けてほしい。おいしい商売を始めたりせずにね(笑)」

人とも初めてだった、山口健人監督の現場

伊藤「現場で生まれる熱量をとても大切にされている印象がありました。とあるシーンの撮影では、脚本から大きく変わってしまったところがあります。それは僕ら俳優部が意図してやったことではなく、芝居をしているうちに自然と生まれたものでした。それが採用されたとき、静也としてあの瞬間を生きていた僕は本当に嬉しかったんです。あと、山口監督と僕は年齢的に近いこともあって、より近い距離感でお話しさせていただけたことも刺激になりました」

本宮「山口監督との仕事は本作が初めて。クランクインまでに何度も打ち合わせをしていたので、それなりに人となりは分かっていたつもりでしたが、現場での彼の視野の広さと解像度の高さは想像以上でした。本当に広く細かいところまで見ていて、俳優に何か演出をする際は、その意図を誰もが理解できるかたちで説明することができるんです。この現場はすべてがタイトだったので、素早い情報の伝達と確実な意思の疎通が必要。その才能に秀でた監督だと思います」

和版『静かなるドン』を経て

本宮「僕のように長く俳優をやっていると、興味の幅が広がったり、人脈が増えてきたりします。そうすると、作品ごとに関わり方が変わってきたりもするんですよね。健太郎もこれからさらに続けていけば、俳優部のこと以外にも興味が出てくるかもしれない。健太郎はこれが初のヤクザ役ということだけど、一緒に芝居をやってみて、いろんな想像が膨らみました。本作はコミカルな要素が強いですが、もっとシリアスに振り切った芝居も面白そう。今後も任侠ものを世に出したい人間として、彼にはもっといろんな役を演じてほしいですね。次の機会には別のアプローチをしたいと思います」

伊藤お芝居は楽しいですし、大好きです。『冬薔薇』のインタビュー時に“芝居ができることの喜びを噛み締めています”とお話ししたと思うのですが、あの言葉を3年前の僕が言えたかというと、たぶん言えなかったと思います。でもいまは心の底からそう言える。それは一度すべてを失ったからです。その経験があるからこそ、この『静かなるドン』の現場も1秒1秒がとても大切なものだと感じていました。現場に立たせていただけることがいかに幸せなことなのか再認識しています」

本宮泰風
もとみややすかぜ|俳優
1972年2月7日生まれ。俳優の兄・原田龍二の芸能界入りをきっかけにスカウトされ、1994年、日本テレビ系ドラマ「シュプールは行方不明」でデビュー。数々のVシネマや任侠映画に出演し、代表作に『日本統一』シリーズがある。

伊藤健太郎
いとうけんたろう|俳優
1997年6月30日生まれ。東京都出身。モデル活動を経て、2014年にフジテレビ系ドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」で俳優デビュー。『俺物語!! 』でスクリーンデビューを果たし、『デメキン』で映画初主演。近年の主な出演作品に『宇宙でいちばんあかるい屋根』、『今日から俺は!!劇場版』、『十二単衣を着た悪魔』『冬薔薇(ふゆそうび)』などがある。

『静かなるドン』
監督・脚本 / 山口健人
総合プロデュース / 本宮泰風
出演 / 伊藤健太郎、筧美和子、深水元基、本宮泰風、三宅弘城、坪倉由幸、内田慈、朝井大智、小西貴大、藤井陽人、今野杏南、宮崎吐夢、金橋良樹、飛永翼、香川幸允、御子柴彩里、鈴木裕樹、兒玉宣勝、斉藤天鼓、舘昌美、中村公隆、本田広登、川﨑健太、喜矢武豊、筒井真理子、寺島進
公開 / 5月12日(金)より前編・後編各1週間連続上映
© 2023「静かなるドン」製作委員会

関東最大規模の暴力団新鮮組のひとり息子近藤静也(伊藤健太郎)。けれど、彼は「ヤクザなんて嫌い、カタギとして平和に生きたい」と願い、デザイン会社で働き、イマドキの草食系男子として生きている。仕事ができないと怒られながらも、同僚の秋野さん(筧美和子)に淡い恋心を抱き、普通に働く毎日。それが静也の幸せ。しかし、そんな静也の生活が一変する事件が起きるのだった……。普通に生きたいだけなのに、新鮮組の危機に直面した静也。いったいその危機とは!? そして新鮮組の行く末は……⁉️

撮影 / 西村満 取材・文 / 折田侑駿
ヘアメイク(伊藤) / 竹島健二 スタイリスト(伊藤) / 前田勇弥
ヘアメイク(本宮) / 坂口佳那恵 スタイリスト(本宮) / 荒川小百合
衣装(伊藤) / レザージャケット The Letters(レターズ)問い合わせ先:〒153-0042 東京都目黒区青葉台3-17-10-1F 03-6427-0280

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」5月号についてはこちら。
DOKUSOマガジン5月号(vol.20)、5月5日発行!表紙・巻頭は宮沢氷魚、センターインタビューは本宮泰風×伊藤健太郎!

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