激戦区新宿に居を構える日本映画専門のミニシアター「テアトル新宿」を訪問! ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は、激戦区新宿に居を構える日本映画専門のミニシアター「テアトル新宿」にお伺いしました。


初めてそこへ足を踏み入れたのはいつのことだろう。これまでそこで何本の日本映画と巡り会ってきたのだろう。少なく見積もっても、13年以上僕はそこへ通い続けている。特定の作品について思い返す時、映画館で目にした作品であり、且つ思い入れのある作品であったのなら、自ずとその場所の記憶もよみがえる。そんな経験があなたにもないだろうか。

僕にとって、『そこのみにて光輝く』『0.5ミリ』『ハッピーアワー』『オーバー・フェンス』『寝ても覚めても』『花束みたいな恋をした』『ちょっと思い出しただけ』などの作品を思い返す時に自ずと呼び覚まされるのが、今回ご紹介する映画館。新宿三丁目駅から徒歩3分、映画激戦区である新宿エリアに居を構える日本映画専門のミニシアター「テアトル新宿」である。


その始まりは1957年。意外なことに、当初は名画座として幕を開けていたテアトル新宿。現在の日本映画を専門としたミニシアターとして確立されたのは、1988年のリニューアル後、しばらく経ってからのこと。今では考えられないが、リニューアル時点のテアトル新宿では、ミニシアター向けの洋画作品も上映されていたという。

1990年代半ばのミニシアターブーム真っ盛りの当時、母体である東京テアトル株式会社は「テアトルダイヤ」「テアトル池袋」「シネセゾン渋谷」「銀座テアトルシネマ」など複数の劇場を運営しており、各劇場に色付けをすることにした。新宿は昼夜を問わず人の往来が激しく、邦画や特集上映の人気が高かったこと、頻繁にイベントが開かれていることが強みだった。そこで、日本の監督を若手時代から多く取り上げ、ここから世界へ羽ばたく監督を輩出していこうという方針のもと、テアトル新宿は“日本映画専門のミニシアター”という唯一無二の色付けがなされたのである。


90年代においては、初期の北野武監督作品を多数上映し、1997年公開の『HANA-BI』はヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞(グランプリ)を受賞。その他にも、岩井俊二監督の作品が上映されたり、2000年公開の青山真治監督作『EUREKA ユリイカ』に関しては、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞。掲げた理想通り、今では誰もが知る名監督たちを若手時代から押し上げ、数多の監督や作品が実際に世界へと羽ばたいていった(近年では濱口竜介監督などもそう)。


そんな選りすぐりの日本映画が多数上映されてきたテアトル新宿の作品選定に関して支配人の中﨑さん(お好きな映画は『トイ・ストーリー』)に話を伺うと、映画館毎に編成担当がいる一般的なミニシアターとは異なり、テアトル系列の映画館に関しては別に編成部という部署が設けられており、各配給会社と交渉の上、どの系列館で上映されるかが決められているとのこと。時代の流れによって上映作品の幅に変化は生じるものの、どの上映作品を目にしても「テアトル新宿らしさ」を感じ取れるのは、明確且つブレることのないブランディングと、これまでの日々の積み重ねによるものなのだと感じずにはいられない。


花園神社近くの靖国通り沿いにある劇場入口付近には、映画好きでなくとも目が留まるであろう上映作品の大きな看板をはじめ、各作品のポスターや記事が貼られており、通りすがりの人々が足を止めていることもしばしば。地下にある劇場へと至る階段を降りていくとまず目に入るのが、チケットカウンターと劇場ロビー。地下の限られた空間ながらも窮屈さは感じられず、上映作品に関する展示物や映画のフライヤーなどが多数設置されているほか、いくつか座席も設けられており、上映が始まるまでの時間をゆったりと過ごすことができるだろう(最近ではWi-Fiが導入されたため地下でも安心!)。

今ではどの劇場でも当たり前のように行われているが、舞台挨拶やゲストを招いての上映イベントが昔から頻繁に開催されているのもテアトル新宿の持ち味の一つであり、それもまた、日本映画を専門とする映画館としてやってきたからこそなせるわざ。僕自身、初めて映画の上映イベントというものを目にしたのもテアトル新宿であった。


チケットカウンター横には「テアトルカフェ」というフード販売エリアがあるのだが、テアトル新宿を語る上で外すことのできない要素がここにも一つある。そう、それは上映作品とのコラボドリンク販売である。上映中のお手洗いを回避すべく、日頃映画館で飲食をしない僕ですが、テアトル新宿のコラボドリンクだけは別。と言うのも、作品内容に沿ったドリンクであるため、より一層作品世界へ入り込めたりテンションを高めることができるのです。中﨑さんに話を伺うと、コラボドリンクは劇場スタッフがレシピを考え試作品を作った上で、商品化へ至っているとのこと。まさに映画愛のなせるわざ。


これまで数度のリニューアルを経てきた2023年現在のテアトル新宿は、コトブキ社製の座席が218席、クリスティ社製のデジタルシネマプロジェクターを有し、音響は7.1ch。2021年には、アートハウスの最先端として妥協のない音作りを目指した音響システム「optimal design sound system(+α)」(「劇場ごとに最適化されたサウンドシステム」に「劇場独自の映画体験が付加される」という意味)、通称「odessa(オデッサ)」が導入され、従来の劇場クオリティからさらにグレードアップしたスタジオクオリティで音響体験ができるミニシアターへと進化した。往年の名作からスタッフの趣味全開な作品、監督を招いての上映など、「odessa Midnight Movies」と銘打ったオールナイト上映も定期的に開催中(詳しいイベント情報は、テアトル新宿のTwitterアカウントをチェック!)。

日本の監督を若手時代から取り上げ、ここから世界へ羽ばたく監督を輩出する。「若手映画監督の登竜門」と呼ばれる田辺・弁慶映画祭受賞作品の上映イベントが毎年開催されていたりと、長い歴史の中で、その精神や文化は未だ衰えることなく、あらゆる形・手段へと発展し、今も実践・継承され続けている。日本映画の“今” を知りたいのなら、そして、日本映画の“可能性”を感じ取りたいのなら、テアトル新宿へ足を運ぶのが一番であると僕は思う。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「テアトル新宿」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!


入り口にちょこんと置いてあるこちらは、テアトル新宿のオリジナルマット。かっ、かわいい...。


テアトル新宿の地下へと降りる階段の壁!です!!普段は気にして見ていなくても、実はその劇場のイメージを形作っている一部だったり...。私はこの壁と階段の色が落ち着きます♪


スナックコーナー!海外のお菓子がたくさん売っていてワクワクします!ポップコーンのフレーバーも珍しいので、映画と併せて楽しんでください♪


テアトル新宿といえば、映画とのコラボドリンク!!なんとこのドリンク、毎回スタッフさんがレシピを思案しているのだとか...!というわけでちゃっかりミヤザキさんにご馳走になった花柳です。

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます!「テアトル新宿」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。ぜひお楽しみに♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ

文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」3月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン3月号(vol.18)、3月4日発行!表紙・巻頭は斎藤工、センターインタビューは髙石あかり&伊澤彩織!

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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