小出恵介「ここから再スタートを切りたい」『銀平町シネマブルース』インタビュー 2023.2.9
ある一人の青年を中心に、映画を愛する者たちの人間模様が展開する『銀平町シネマブルース』。崖っぷち状態に陥った小さな映画館が舞台の群像劇だ。人生につまづいてしまった映画青年の近藤を演じた小出恵介は、「映画に育てられてきた」と自身のことを語る。そんな彼に、本作にかけた想いや現場でのエピソードについて話を聞いた。
ここから再スタートを切りたい
──出演が決まった際の心境を教えてください。
「これはミニシアターが舞台の、うらぶれた者たちの群像劇です。何かしら欠けたところのある人々の群像劇というのは少なくないですが、本作の場合はその中心に、“映画”や“映画館”というものがある。純粋に惹かれましたね。僕は2005年公開の『パッチギ!』への出演以降、いくつもの映画に出させていただいて、俳優として“映画に育てられてきた”という思いがあります。ですがいつからかテレビドラマへの出演や、大規模な映画作品への出演の機会をいただくことが多くなりました。
そのような中、自分の原点に立ち返ることのできる作品に出会いたいと思っていたんです。そこには、いまの自分を見つめ直したい気持ちと、いまの自分が持っている視座で改めて映画に向き合いたいという想いがありました。それは本作のように、座組の関係性が密なものでなければなりません。結果として、贅沢かつ貴重な経験になりました」
──現場は具体的にどのようなものだったのでしょうか?
「一人ひとりの距離感が近かったです。その場にいる人々ときちんと向き合ってコミュニケーションを取らなければ成立しない現場で、そんな現場だからこそできる映画作りがある。あの場に漂っていた空気感は、実際に映画本編に収められていると思います。現場に立っていて、周囲の人々の映画への熱い想いをひしひしと感じていました。それは簡単に言語化できるレベルではないものです。映画への愛情が溢れ出しているといいますか……。
そういう役者さんたちの集まる現場で、なおかつこういった題材なので、カメラが回っているときでも役を演じているのか本人なのか分からない瞬間が多々ありました。いい時間でしたね」
──いまおかしんじさんの脚本と、近藤というキャラクターにはどんな印象を持ちましたか?
小出恵介
こいでけいすけ|俳優
1984年2月20日生まれ。東京都出身。2005年、ドラマ「ごくせん」でデビュー。同年、映画『パッチギ!』に出演し注目を集める。以降、ドラマ「ROOKIES」、「JIN-仁-」、「のだめカンタービレ」、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、映画『僕の彼女はサイボーグ』、『風が強く吹いている』など映画やドラマ、舞台などで幅広く活動。近年の主な出演作に、映画『シン・ゴジラ』、『愚行録』、『ハルチカ』、『戦神/ゴッド・オブ・ウォー』、『女たち』、『Bridal, my Song』、ドラマ「酒癖50」、舞台「群盗」、「12人の淋しい親たち」、「日本昔ばなし」貧乏神と福の神〜つるの恩返し〜 などがある。
『銀平町シネマブルース』
監督 / 城定秀夫
脚本 / いまおかしんじ
出演 / 小出恵介、吹越満、宇野祥平、藤原さくら、日高七海
公開 / 2月10日(金)より新宿武蔵野館 他
©2022「銀平町シネマブルース」製作委員会
あらすじ
かつて青春時代を過ごした町・銀平町に帰ってきた一文無しのの青年・近藤は、ひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤と、映画館“銀平スカラ座”の支配人・梶原と出会い、バイトを始める。同僚のスタッフ、老練な映写技師、個性豊かな映画館の常連客との出会いを経て、近藤はかつての自分と向き合い始めるが......。
撮影 / 角戸菜摘 取材・文 / 折田侑駿 ヘアメイク / 勇見勝彦(THYMON Inc.)
衣装 / ジャケット¥40,349/COOR、インナー¥5,963/musinsa standard、パンツ¥24,561/noirer
今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」2月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン2月号(vol.17)、2月5日発行!表紙・巻頭は外山文治監督×岡本玲、センターインタビューは小出恵介!
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