高級、上質という名の映画館「新宿シネマカリテ」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

ミヤザキタケル

今回は、新宿駅から徒歩2分、10周年を迎えたばかりのミニシアター「新宿シネマカリテ」にお伺いしました。


特定の作品や思い入れの深い作品について思考を巡らせる時、それが映画館で目にしたことのある作品であったのなら、いつどこで鑑賞したのかという記憶がよみがえる。そんな経験が、あなたにもありませんか?

僕にとって『パロアルト・ストーリー』『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『ウォーリアー』『ロブスター』『すれ違いのダイアリーズ』『幸せなひとりぼっち』『ジェーン・ドウの解剖』などの作品について思い返す際、自ずと呼び起こされるのが今回ご紹介する映画館。JR新宿駅東南口および中央東口より徒歩2分、歴史ある新宿武蔵野館の姉妹館として2012年12月22日に開館し、記念すべき10周年を迎えたばかりのミニシアター「新宿シネマカリテ」である。


フランス語で「高級・良質・上質」などの意味を持つ「カリテ」。その単語が映画館の名称に用いられたことが過去にもあることをご存知だろうか。それは、100年にわたる歴史を持つ姉妹館・新宿武蔵野館でのこと。1994年〜2001年にかけて、新宿武蔵野館と同じ武蔵野ビル内でミニシアター作品を専門に上映し、美術館やカフェをも併設する「シネマ・カリテ(中黒あり)」が存在したのだ。

しかし、2002年のリニューアルに伴い、ロードショー館として営業していた新宿武蔵野館と統合。その名が使われることはなくなってしまった。だが、「シネマ・カリテ」という名称には運営元である武蔵野興業株式会社の特別な思い入れがあり、新しく劇場を開く際には再びその名を用いようと考えていた。そして10年の時を経て再び新宿の地に「シネマカリテ」が舞い戻ってきたのである。


これから別世界(映画の作品世界)へと足を踏み入れる予感を感じずにはいられない地下へと向かう階段を降りると、中央に柱のある広々とした劇場ロビーへと辿り着く。映画のフライヤーをはじめ、映画関連書籍なども多数手に取れるほか、フード・ドリンク類も充実しているため、早めに来て上映開始までの時間をゆったりと過ごすのもオススメ。


また、上映作品の手作りディスプレイや立体パネルの展示、上映作品にちなんだ水生生物の入った水槽など、新宿武蔵野館と姉妹館であることを強く感じさせてくれる要素も大いにお楽しみいただけることだろう。


設備面においては、2つのスクリーンを有し、スクリーン1は96席、スクリーン2は78席。フランス製キネット社の座席を使用しており、音響はDolby surroundを採用。フィルム上映にも対応している。


元々飲食店であった場所を映画館に改装したため柱の位置を変更することができず、スクリーン1はスクリーンがやや右寄りにある変則的な形態をとっているのだが、それもまたシネマカリテならではの魅力となっている(鑑賞時の弊害はありません)。


上映作品の編成基準や姉妹館である新宿武蔵野館との差別化などについて支配人の平下さんに話を伺うと、編成の方針は基本的には武蔵野館と変わらず、“新宿”という土地柄ゆえに客層や世代を問わず、まずは面白いと思った作品を上映しているとのこと。

その上で、カリテは武蔵野館と比較すると女性や若年層の方が多く、『勝手にふるえてろ』『君の名前で僕を呼んで』『街の上で』など、若者向けの作品や女性視点の作品を多く編成することで武蔵野館との違いが生じているようだ。


そして、シネマカリテを語る上で絶対に外すことのできない特集上映企画の存在もまた、武蔵野館と一線を画する要因になっている。その名も、「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション®」。

毎年夏に開催されており、2022年に第8回目を迎えた通称「カリコレ®」では、ジャンルや製作国を問わず、新作・旧作・日本未公開作など、カリコレならではのエッジの効いた珠玉の厳選作品が約1ヶ月かけて上映される(冒頭に記した『パロアルト・ストーリー』『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『ウォーリアー』などもカリコレ上映作品)。


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ここでしかお目にかかれない作品もあれば、後にサブスクなどで配信される作品も中にはあるが、それらの作品を劇場の大きなスクリーンで体感できる機会というのは唯一無二のもの。素晴らしい作品は、たとえ家のTVやPCやスマホ画面で目にしたとしても十分楽しめるが、劇場の大きなスクリーンで体感してこそ感じられるもの、生まれるもの、刻まれるものがあると僕は思う。

「不思議の国のアリス」をテーマにした田中梓さん手がけるカリコレのメインビジュアルが示す通り、さながら映画とは未知との遭遇。映画館とはまだ見ぬ世界へと僕たちを誘ってくれる不思議な場所。カリコレは、サブスク全盛の現代において、映画を映画館で目にすることの醍醐味を再認識させてくれるイベントでもあるのだ。


節目となる10周年を迎えた「シネマカリテ」。今後の意気込みを平下さんに伺うと、「これからの10年もより劇場としての価値を強めていけるよう、カリコレをはじめとしてジャンルに囚われない至極のラインナップを上映していきたいです。」と力強い言葉をいただけた。

今から10年後、映画を取り巻く環境がどのようなものになっているかは検討もつかないが、シネマカリテはその精神性を変えることなく新宿の地下に在り続けてくれるに違いない。日頃東京へ訪れる機会がないという方には、本コラムをはじめ、上映作品や館内の展示物などの情報を日夜発信しているシネマカリテのTwitterアカウントを通し、その空気感を僅かでも感じ取っていただきたい。


また、存在は把握しつつも訪れたことがないという方も、この機会に是非地下へと至る階段を下って未知との遭遇を果たしてみてほしい。まだ見ぬ出会いがあなたを待っています。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「新宿シネマカリテ」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!」


壁がお洒落なシネマカリテ!劇場に向かうまでのこの階段から、非日常の世界に入り込めちゃいます。ミヤザキさんのシネマカリテTがいい味出してるぅ〜!!


様々な映画雑誌や、パンフレットの実物が展示されているコーナー!なかなか映画館で見かけないですよね。映画ファンにとって待ち時間に嬉しいところ♩


扉を開けたら...ヒィッッッ!その時々の作品にまつわるオブジェがあるのもシネマカリテの魅力のひとつ!


花柳の偏愛シリーズ、フォントです!カクカクしたフォントはもちろん、天井からの吊るされ方もお洒落〜〜!!!たまらんですっっ

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます!「新宿シネマカリテ」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。ぜひお楽しみに♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

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⇒DOKUSOマガジン1月号(vol.16)、1月7日発行!表紙・巻頭は柄本佑!

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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