「早稲田松竹のラインナップ、期待しかないですね」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は高田馬場駅から徒歩7分、2021年に70周年を迎えた名画座「早稲田松竹」にお伺いしました。


2010年6月、僕は初めてそのミニシアターに足を運んだ。かつて、恋人と別れた直後の僕に痛いほど突き刺さった『(500)日のサマー』と『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を再び劇場のスクリーンで目にするためだ。「それでも、僕は恋をする!」と名付けられた、この二本立て上映のタイトルがとても的を得ていたことを覚えている。

2021年に公開された坂元裕二脚本作品『花束みたいな恋をした』の劇中にて、「早稲田松竹のラインナップ、期待しかないですね」(台詞ママ)と語られているが、僕はその後に上映されるラインアップ、名付けられる二本立てのタイトルを含め、往年の名作をスクリーンで観られる機会にどんどん心奪われていった。

というわけで今回ご紹介するのは、高田馬場駅から徒歩7分、ロードショーの終了した映画や過去の名作を二本立て上映する名画座であり、2021年に70周年を迎えた「早稲田松竹」である。


その始まりは1951年12月21日。その名が示す通り、松竹系列の封切館として幕を開けた早稲田松竹であったが、1975年より二本立てを中心とした名画座の形を取るようになり、同じく高田馬場にあった高田馬場東映劇場、高田馬場東映パラス、高田馬場パール座らと共に、映画の聖地として多くの学生や映画好きに愛されてきた(高田馬場に現存する映画館は早稲田松竹のみ)。

その後、1993年の大改修工事や2002年の休館などを経て、館内設備のアップデートを繰り返しながらも、建物の外観だけは開館当時と変わることなく今日に至っている(余談ですが、路面に接し、別階に他のテナントなどが入っていない映画館だけの建物は、都内で早稲田松竹だけ)。二本立ての鑑賞料金は一般1300円(学生は1100円)、ラスト一本割引だと800円。映画サービスデーとなる毎月1日は誰でも800円で二本鑑賞できる。


座席数は153席を誇り、スクリーンはフィルム上映にも対応。往年の名作をフィルム上映でぜひ一度体験していただきたい。また、館内ロビーには上映作品の特集記事をはじめ、映画や映画関連イベントのフライヤーなどが設置され、オリジナルグッズの販売もあり、作品と作品の間のインターバルを持て余すことなく過ごせるだろう。


気になる上映作品の選定に関して支配人の平野さんに話を伺うと、「こだわりはない」「何でもやりたい」という意外な答えが返ってきた。一ヶ月5週間として、週ごとに国と時代の異なる作品を意識してバラバラに組み込んでいるのは、何か一つでも引っかかる作品があれば良いという狙いがあるそうだ。言葉とは裏腹に、そうして上映作品に興味を持ってもらうキッカケを生み出そうとしている姿勢にこそ、“こだわり”を感じずにいられない。


男女二人の担当者が毎回頭を悩ませながら作品を選定し、先述した二本立てのタイトルも含めて決めているそうなのだが、ぜひ劇場にあるラインアップのチラシや、公式サイト、SNSなどを見て、どのような作品スケジュールが組まれているのか、その“こだわり”をご自分の目と心で確かめていただきたい。1993年から現在に至るまでの上映ラインアップもアーカイブとして掲載されているので、一見の価値あり。

早稲田松竹のTwitterInstagram

過去には横浜聡子監督や蔦哲一朗監督が働いており、映画作りの道を志す人が集う場所でもある早稲田松竹。昨年、初の長編監督作品となる『ふゆうするさかいめ』が話題となった住本尚子監督も同様で、早稲田松竹のラインアップチラシや70周年特別チラシのイラストなどを手がけている。


また、2017年からは早稲田大学映像制作実習とのコラボレーション上映が始まり、学生たちが作品を作って終わりではなく、「映画を撮る」「宣伝をする」「お金をいただく」「映画館で上映する」といった一連の流れを経験できる機会を設け、若き才能を育む場としても機能している点は敬意を表したい。


試行錯誤の上に厳選された映画や、往年の名作を格安且つ二本立てで観られるほか、今後の日本映画界を担うかもしれない若き才能にも巡り逢え、長年に渡りたくさんの映画好きや映画人に愛されてきた老舗名画座「早稲田松竹」。都内にお住まいの方はもちろんのこと、他県にお住まいの方も、東京へお越しの際にはぜひ一度足を運んでみてください。

早稲田松竹のことを把握した上で『花束みたいな恋をした』を目にしたのなら、絹ちゃんの発する一言に深く同意できると思います(笑)。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「早稲田松竹」の見逃せないところをご紹介します。題して「はなやぎのビビッとポイント!」


外にある今後の上映作品紹介コーナー。ジャンルも年代も国もバラバラで、どんな映画と出会えるんだろうってワクワクしますね!個人的には年代を感じさせる“豪華ラインアップ"の文字もたまらないですっ!


抜き足差し足忍び足...なトイレマーク。ユーモラスなデザインがツボです!!かわいい〜!


過去のちらしを毎月プレイバックするコーナー。年季の入ったものや、懐かしい!と感じるものまで、早稲田松竹の歴史を感じられるコーナーです。


早稲田松竹の運営を担っていると言っても過言ではない(!?)スーパーアルバイターの皆さん。そのお一人である住本尚子さんが描いた早稲田松竹の歴史イラスト!かわいい...ほっこり。

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます!「早稲田松竹」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。ぜひお楽しみに♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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