三浦透子「普段から思っていたことに改めて向き合う機会になりました」インタビュー『そばかす』

DOKUSOマガジン編集部


恋愛や結婚ばかりが重視される社会で、ただ自分が自分であることを表現しようとする女性の姿を描いた『そばかす』。世の中で「普通」とされているものに疑問を投げかける作品だ。そんな本作にて長編映画単独初主演を務めた三浦透子に、作品のテーマや演じた役にかけた想いなどを語ってもらった。

「私自身が普段から思っていたことに改めて向き合う機会になりました」


©2022「そばかす」製作委員会 (not) HEROINE movies メ〜テレ60周年

──多くの作品でいつも印象に残る役どころを務めているので、本作が初主演だというのが意外でした。出演の経緯から教えてください。

「企画・脚本を務めているアサダアツシさんから、この蘇畑佳純という30歳の女性主人公を演じて欲しいとオファーをいただきました。企画そのものに惹かれましたし、これが立ち上がることにとても意義があると感じました。まだまだ認知が進んでいないアセクシュアルというセクシュアリティを、作品を通して知ってもらうきっかけになるんじゃないかと」

──作品が生まれること自体に意義があると感じられたんですね。

「いまの社会で“当たり前”とされていること、“普通”とされていること、“常識”とされていることを押し付けられて窮屈さを感じた経験が、一人の人間としてあります。そんな私がこの脚本を読んで、救われるような気持ちになったんです。社会全体に理解してもらえる形に変わろうと努力をしなくていいのだと。ありのままの自分でいいのだと。ぜひともこの作品のチームの一員になりたいと思いました」


──佳純への共感が大きかったと?

「オファーをいただいた際、必ずしも役と自分との共通点の有無が出演を決める理由になるわけではありません。作品への参加にはいろいろな理由がありますから。ただ本作の場合は前提として、セクシュアリティやアイデンティティのお話ですので、私自身がまったく共感できないのであればお受けするべきではないと思っていました。私自身も、ステレオタイプの“26歳の日本人女性像”を当てはめられることに違和感を覚えたことがあります。“恋愛すべき”というのもまさにそのひとつでした。

それが当たり前のこととして共有されていることに違和感があった。人を好きになることって、いろんな考え方や捉え方がありますし。アセクシュアルにもグラデーションがあって、自認しにくいものでもある。“自分もアセクシュアルなのかもしれない。でもどうなんだろう?”と悩んでいる方もたくさん存在すると思います。悩んでいいはずですし、定めなくていいし、複雑なものは複雑なままでいい。そういうメッセージも本作にはあります。

佳純のセクシュアリティが故に抱える悩みを“誰もが持っているもの”だと一般化してしまうのは、それはそれで危険なことだと思いますが、自分は彼女に共感できますと簡単に言ってしまってよいのだろうかという悩みも含めて共有できると思いました。私自身が普段から思っていたことに改めて向き合う機会になりました」


©2022「そばかす」製作委員会 (not) HEROINE movies メ〜テレ60周年

──物語に対する印象はいかがでしたか?

「これは主人公・蘇畑佳純の成長のお話でもあります。物語のはじまり時点での彼女は、自分という存在を理解してもらうことをどこかあきらめてしまっている。極端な言い方をしてしまえば、自分の方がおかしい人間なのだというようなところに立っている。

そこから色んな人との出会いを通して、彼女は、周囲の人々との違いだったり、ありのままの姿を受け入れてくれない社会があるならば、そちらの方が間違っている、そういう社会に対して声を上げたり、闘う姿勢を取ってもいいのだと気づき、そんな自分のことを好きになれるようなところにまで変化していきます。

彼女の弱さも描いた本作ですが、私には一貫して、自分というものを強く持っている女性に見えました。彼女には強さもあるし、優しさもある。痛みが分かる人間だからこそ、他者に対して優しいんです。他者が持つ自分との違いも、佳純は受け入れられる心を持った人だと感じました」


──本作には佳純だけでなく、それぞれにマイノリティ性を抱えた人々が登場しますよね。

この記事の続きを読むには

画像4枚、約1500文字

新規登録はこちら


三浦透子
みうらとうこ|女優、歌手
1996年生まれ、北海道出身。2002年「なっちゃん」のCMでデビュー。主な出演作は、映画『私たちのハァハァ』、『月子』、『素敵なダイナマイトスキャンダル』、『あの日のオルガン』、『ロマンスドール』、『スパゲティコード・ラブ』、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。第94回アカデミー賞で国際⻑編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。歌手としても活動し、映画『天気の子』では主題歌のボーカリストとして参加。本作では主題歌「風になれ」の歌唱も担当する。


『そばかす』
監督 / 玉田真也
企画・原作・脚本 / アサダアツシ
出演 / 三浦透子、前田敦子、伊藤万理華、伊島空、前原滉、前原瑞樹、浅野千鶴、北村匠海(友情出演)、田島令子、坂井真紀、三宅弘城
主題歌 / 三浦透子「風になれ」
公開 / 12月16日(金)より新宿武蔵野館 他
©2022「そばかす」製作委員会 (not) HEROINE movies メ〜テレ60周年

あらすじ
私・蘇畑佳純(そばたかすみ)、30歳。チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。妹は結婚して妊娠中。救命救急士の父は欝気味で休職中。バツ3の祖母は思ったことをなんでも口にして妹と口喧嘩が絶えない。そして母は、私に恋人がいないことを嘆き、勝手にお見合いをセッティングする。私は恋愛をしたいという気持ちが湧かない。だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。でも、周りはそれを信じてくれない。恋する気持ちは知らないけど、ひとりぼっちじゃない。大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。進め、自分。

撮影 / 西村満 取材・文 / 折田侑駿 ヘアメイク / 秋鹿 裕子 (W) スタイリスト / 佐々木翔
衣装 / ジャケット¥89,100 ビューティフルピープル(ビューティフルピープル 青山店 TEL:03-6447-1869)、ネックレス¥66,000 ジョンスメドレー × ジジ(リーミルズ エージェンシー TEL:03-5784-1238)、そのほかスタイリスト私物

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」12月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン12月号(vol.15)、12月5日発行!表紙・巻頭は三浦透子!毎熊克哉の新連載スタート!

お近くに配布劇場が無いという方、バックナンバー購入ご希望の方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。

DOKUSOマガジン編集部 編集部

DOKUSOマガジン編集部のアカウントです。

この連載の人気記事 すべて見る
今読まれてます RANKING