誰もが映画を楽しめる日本で唯一のユニバーサルシアター「CINEMA Chupki TABATA」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

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今回は田端駅から徒歩5分、商店街の一角に居を構えるその小さな映画館「CINEMA Chupki TABATA」にお伺いしました。


こうしてミニシアターへと足を運び、本コラムをお読みいただいているあなたにとって、映画館へ足を運ぶという行為、映画館で映画を観るという行為は、至極当たり前のことであるのだと思う。しかし、そんな“当たり前”が“当たり前ではない”人も中にはいる。目が見えない人、耳が聴こえない人、車いすの人、小さなお子様を連れた人etc…。どれだけ映画に興味・関心があろうと、気軽に映画館へ足を運べない人もいるのだ。ただ、今回ご紹介するミニシアターの存在を知っていただけたのなら、きっと話は変わってくる。田端駅から徒歩5分、商店街の一角に居を構えるその小さな映画館の名は、「CINEMA Chupki TABATA」。誰でも気軽に映画を楽しむことができる日本で唯一の“ユニバーサルシアター”である。


その始まりは2001年。視覚障害の人たちにも映画を楽しんでもらいたいという思いから、CINEMA Chupki TABATAの母体であるバリアフリー映画鑑賞推進団体「City Lights」が設立。海外ではその頃から既にバリアフリー上映がさかんに行われており、音声ガイドや字幕サポートの設備が整ったバリアフリー映画館が全米には100館以上存在していたものの、日本では同様の設備を持つ映画館は皆無。そんな状況ながらも、海外でこれだけバリアフリー化が進んでいるということは、目が見えない人たちの映画鑑賞需要は全世界的にあるのだと思いCity Lightsを設立したのだと語ってくれたのは、City Lights及びCINEMA Chupki TABATAの代表である平塚千穂子さん。


メルマガの送付・映画館への付き添い・鑑賞時におけるFM電波による副音声解説など、当事者の方たちとの地道な交流・サポートをくり返していく中で、2008年には大きなホールを借り「City Lights映画祭」を開催。その頃から活動の規模を大きくしていくためにも、自分たちの映画館を持つという目標を定め、“夢貯金”を開始。2013年の第7回映画祭開催時までに貯めた500万円を元手に、前身となる「アートスペース・チュプキ」を2014年にオープン。そして、より設備が整ったバリアフリー映画館を作るべくクラウドファンディングを開始。多数のサポーターに支えられ、2016年に誕生したのがCINEMA Chupki TABATAである(チュプキとはアイヌ語で「自然界の光」の意)。


スクリーン数1、座席数20と小さな映画館ではあるが、侮るなかれ…。スクリーンサイズ 120インチ(16:9)。劇場の音響設備はアニメ「ソードアート・オンライン」シリーズなどを手掛ける音響監督・岩浪美和さんがコーディネートしており、劇場の前面・側面・後面・天井にスピーカーを配置。Dolby Atmosにも対応。車いす席はもちろん、周囲を気にしなくて済む完全防音の親子鑑賞室や、映画の音を振動で感じる抱っこスピーカーの貸出、全席にイヤホンジャックが付いているほか、上映する全ての映画にイヤホン音声ガイドとバリアフリー字幕がついている(未対応の音声ガイド及び字幕は、全て劇場2Fの事務所にて自社制作)。


実際に音声ガイドを聴きながら鑑賞させていただいたのだが、時折あえて目を瞑って鑑賞することで、音声ガイドがもたらす恩恵に気付かされるのと同時に、目が見えない人がどのように映画を鑑賞しているのか疑似体験することができたので、こちらも是非一度お試しいただきたい。また、封切館ではないものの、頻繁に舞台挨拶が行われている点も要チェック。小さな映画館であればこそ、登壇する監督やキャストとの距離感が(身体的にも精神的にも)近くなり、より密接なコミュニケーションが図れるため、お客様には大変喜ばれている。劇場ロビー壁面には、これまで来場した監督・キャストのサインがぎっしりと書き込まれており、天井を彩るチュプキの樹の葉っぱには、設立支援者の名前が記されている。その光景は、映画を愛する者たちによって築かれた空間であることを強く感じさせてくれることだろう。


©Chupki

この秋には、CINEMA Chupki TABATA初製作となるドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』の上映がスタート。監督を務めるのは、『この世界の片隅に』の片渕須直監督を追ったドキュメンタリー『<片隅>たちと生きる 監督・片渕須直の仕事』の山田礼於監督。舞台で役者の台詞や感情を手話で表現する舞台手話通訳者たちに迫った作品となっているのだが、その映像を目の見えない人に伝えるための音声ガイド制作のプロセスにも焦点を当てた作品となっている。つまり、“聴こえない人”のための手話表現を、どうすれば“見えない人”に届けられるのかを試行錯誤する関係者の姿を捉え、立場や境遇の異なる人々がどうしたら分かり合えるのかを模索する時間を映し出していく。こちらも是非ご覧いただきたい。


バリアフリー映画館ではあるものの、そこに「健常者だから」「障害者だから」といった境目は存在しない。邦画・洋画・アニメ、メジャー・インディーズ問わず幅広い作品が上映され、誰もが安心して映画を楽しむことができる場所。それこそが「CINEMA Chupki TABATA」。人と人とのつながり、あたたかな光が宿ったやさしい映画館です。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「CINEMA Chupki TABATA」の見逃せないところをご紹介します。
題して、「はなやぎのビビっとポイント!」


至る所にアートが溢れているのが見えますか?「素敵な映画をありがとう」という言葉が飛び交うほど、CINEMA Chupki TABATAは劇場とお客様との垣根がないのです。


スクリーンの一角。はらぺこあおむしが大好きだった私は大興奮!!ぜひCINEMA Chupki TABATAに来たら探してみてください。他にも愛らしい仲間たちがいっぱいいます♪♪


ここは親子で映画を楽しめる親子鑑賞室。他のお客様を気にすることなく映画を楽しんで欲しい。そんな想いから生まれたお部屋です♪


マイクがあるお部屋。ここでは音声ガイドが制作されています!見える方にも見えない方にも映画を楽しんでほしい!バリアフリー映画館はここからスタートしました。

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます!「CINEMA Chupki TABATA」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。 次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。 ぜひお楽しみに♪


ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー 1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優 1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」10月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン10月号(vol.13)、10月6日発行!表紙・巻頭は高杉真宙

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ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

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