マキタスポーツ「悩める人と悩みをクリアしたと思いこんでいる人に観ていただきたい」ー『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

DOKUSOマガジン編集部


とあるオフィスの社員全員が同じ一週間を繰り返すタイムループムービー『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。タイムループの原因となる永久(ながひさ)部長をコミカルかつ哀愁漂う表情で演じたマキタスポーツさんに、本作の見どころと、自身と役を照らし合わせての思いをお聞きしました。

ー本作は同じ一週間を繰り返す登場人物たちが、ループから抜け出そうと必死にもがく様を描いています。マキタさんが演じた永久部長はそのカギを握る人物です。演じてみていかがでしたか?

円井わんさん演じる主人公の吉川を含めて、タイムループから抜け出そうとする若いみんなと永久部長は違いますよね。若い人はワクワクドキドキの中にいるので、タイムループのように同じことが続くなんて許せない。でもちゃんと社会人として生きてきて、会社の中でポジションを築いたり、責任を持たされたりするうちに、いつの間にかルーティン化・ループ化する日常に安心するようになる。永久部長はそんな象徴だと思います。


©CHOCOLATE Inc.

ー永久部長は「時よ止まれ〜」と言ってしまうほど歳を取ることを嫌がりますよね。マキタさんは年齢を重ねながらどんな心境の変化がありましたか?

こればかりは抗えないので、一回性の中に生きている侘しさを感じるようになってきたかなと。若い人たちを見ていると、動いている時間や感じ方が違うと思いますし、やっぱり若さゆえの過ちや、愚かさがある。何かやってしまってから気がつくみたいな。でも歳を重ねるごとに、無計画に無軌道に行動することができなくなる。だから今の頭のままで16歳のマキタ君のコックピットに乗り込んで操縦がしたいなんて不毛な妄想、不妄想をよくします。まあ何日かは操れると思いますけど結局は逆に乗っ取られちゃって、16歳の馬鹿なマキタくんにしかならないでしょうね。

ーそのくらい若さとは強くて楽しいものということでしょうか。

僕は今の大変な時代に青春を過ごしている若い人たちに対して「こんな時代にしてしまってごめんね」と思ってしまう侘しいおじさんなのかもしれないです。でも僕がそんなことを思っているなんてどうでもいいと言いますか、そもそも見えていないのが若さだと思うんです。過去とか関係ない、たった今が彼らの世界ですから。侘びしく思えるのは長く生きてきた人間の特権ですね。


ー長く生き、少し侘しさを感じている永久部長。そんな彼が身につけている数珠のブレスレットが、本作のキーアイテムとなります。マキタさんはいつも身につけているものはありますか?

今から15年ほど前、ぜんぜん仕事がなくてタイガーアイ(虎目石)のネックレスを着けたことがあるんです。そしたらみるみる仕事が好調になりはじめて、最初は半分冗談だったのに今度はもう外せなくて。
こんなの偶然だよって思うようにしてたんですけど、一度何かの機会で外したらなくなってしまい、そのときのパニックはひどかったですね。「タイガーアイがない!探せー!!!」って総動員で探し回ることになって、依存していたとはっきりと気が付きました。今では2代目もあります。最近は着けていないですけど、たまにお香で炙って大事にしています。でも本当にあのときのパニックには自分でもびっくりしました。俺はどんだけ求めていたんだと。(笑)


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ーもう一つの注目ポイントとして、タイムループを気づかせるためのプレゼンがあります。マキタさんは組織において何かを伝えるとき、どのような手段をとることが多いでしょうか?

僕にとって他者が一番間近にいる組織は家族です。でも僕が家庭の長としてトップダウンでやっているかというとそうではない。だんだん子どもたちも成長して抵抗もしてくるし、2人の娘が妻と共闘してきたりするんですよね。だから僕は双子の息子を味方につけて議席数を対等にするしかないんですけど、まだ7歳なので何の役にも立たないどころか母側に持っていかれる。だから結果的にでっかい声を出すしかなくなる。(笑)
それでも僕は僕にできることをちゃんとやるしかない。僕の意見を直接言うと反発されるなって思ったときは、娘にとってパパじゃない別の人、僕の友人とか後輩とか、尊敬しやすい身近な人の話を例にして食事のときにさりげなく話すようにしています。


ー永久部長も影でたくさんのご苦労をされていると思います。最後に本作をどのような方に観ていただきたいですか?

とにかく一人でも多くの人に、というのはもちろんなんですけど、悩める人と悩みをクリアしたと思いこんでいる人に観ていただきたいです。社会生活において、自然だけを相手にしている人で無い限りはだいたいループ、ルーティーンの中にいるはず。また、夢とか望みを置き去りに、犠牲にしながらでも今の暮らしを守ろうと大義の中で動いている人は結構多いはずです。そんな方たちみんなに響く作品だと思っていますので、ぜひご覧ください。

マキタスポーツ|芸人・ミュージシャン・文筆家・俳優
1970年1月25日生まれ。山梨県出身。俳優としては映画『苦役列車』(12)で第55回ブルーリボン賞新人賞などを受賞。近年では『劇場版 きのう何食べた?』(21)、『前科者』(22)など多くの出演作がある。また"音楽"と"笑い"を融合させた「オトネタ」を提唱し、各地でライブ活動を行う。独自の視点をいかした執筆も多く、著作には「一億総ツッコミ時代」、「すべての J-POP はパクリである」などがあり、2022年には初の自伝的小説「雌伏三十年」を上梓している。


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『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
監督 / 竹林亮
脚本 / 夏生さえり、竹林亮
出演 / 円井わん、マキタスポーツ
公開 / 10月14(金)より渋谷シネクイント 他
©CHOCOLATE Inc.

あらすじ
とある小さなオフィスで、後輩2人から「僕たちタイムループしています」と報告を受ける吉川。一人、また一人とタイムループしていることを確信するが、脱出の鍵を握る部長だけはいつまで経っても一向に気がつかない…。いつ終わるともわからない地獄の一週間と向き合う社員たちの新感覚オフィス・タイムループ・ムービー。

撮影・取材・文 / 永井勇成

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