気品を持ち合わせたミニシアター「Bunkamura ル・シネマ」 ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょう with 花柳のぞみ 2022.9.20
映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪
今回は、渋谷駅から徒歩約7分、映画激戦区と言っても過言ではない渋谷エリアにおいて、他の映画館とは一線を画する気品を持ち合わせたミニシアター「Bunkamura ル・シネマ」にお伺いしました!
どれだけの時が経とうと色褪せることなく記憶に刻まれている作品というものが、誰にでも一つくらいはあると思う。それは物語の内容だけではなく、「いつ観たのか」「どこで観たのか」「誰と観たのか」「鑑賞前後に何をしていたのか」「その頃どんな想いを抱えて生きていたのか」など、得てして映画本編以外の思い出も共に刻まれているもの。
2014年に公開された『グレート・ビューティー 追憶のローマ』が心に刻まれている僕にとって、作品に触れる度に呼び起こされる記憶がある。それは、今回ご紹介する映画館で目にしたということ。渋谷駅から徒歩約7分、映画激戦区と言っても過言ではない渋谷エリアにおいて、他の映画館とは一線を画する気品を持ち合わせたミニシアター「Bunkamura ル・シネマ」である。
その始まりは1989年。音楽・舞台・美術・映画など、様々な文化・芸術を発信する東急グループの複合文化施設「Bunkamura」の中の映画館として誕生。座席数150席と126席の2つのスクリーンを有し、「映像芸術の発信地として観客と世界をつなぐ橋渡し」をモットーに、ヨーロッパやアジア映画を中心に芸術性の高い作品や作家性にこだわった作品を30年以上に渡り上映。
同施設内にある「オ―チャードホール」のコンサートや「シアターコクーン」の舞台、「ザ・ミュージアム」の展示と連動した作品を上映することもあるほか、『カミーユ・クローデル』をはじめ、『さらば、わが愛/覇王別姫』『ポネット』『愛、アムール』『君の名前で僕を呼んで』『ファーザー』など、名だたる名作がこの劇場で公開されてきた。オープン当時から番組編成を担当するプロデューサーは変わっておらず、その映画を見極める審美眼には只々敬服してしまう
また、魅力的なのは上映作品のラインアップだけではない。渋谷の喧騒を忘れさせてくれる落ち着いた雰囲気の劇場ロビーにはバーカウンターが併設されており、フードやドリンクのみならず酒類の販売もされているのだが、ビールだけではなくワインも販売されているのはワイン党としては嬉しいところ。
エレベーターから劇場入口へと至るスペースには、多数のフライヤーが設置されているほか、プロジェクターから映し出される予告編を目にすることができるソファ席も用意されており、上映前後の時間を有意義に過ごすことができるだろう。
近年では、Bunkamuraル・シネマが手掛けるオンライン映画館「APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA」がオープンし、一人ひとりに寄り添う映画をよりパーソナルな空間で楽しんでもらうべく、独自に権利を取得した作品や劇場公開されていない隠れた名作など、若手スタッフを中心に選定された作品を配信する新たな試みが行われている。
膨大な作品数を誇る大手サブスクも良いが、数多の名作を上映してきたBunkamuraル・シネマ厳選による、ここでしか目にすることのできない作品がTVOD(都度課金型動画配信)形式で目にすることができるので、コロナ禍や遠方のため直接劇場へ訪れることができない方には是非お試しいただき、僅かでもBunkamuraル・シネマに流れる空気感を味わっていただきたい。
岡田支配人
支配人の岡田さん(奇しくも『グレート・ビューティー 追憶のローマ』がお好きとのことで、大いに話が盛り上がりました。)に話を伺う中で、とても印象的な言葉があった。
「劇場は空気を醸し出してお客様に育ってもらう」
ともすれば誤解を招く一言にもなり得るが、無論そういった意図はない。それは劇場マナーや映画と向き合う姿勢についての話をしていた流れでの発言であり、Bunkamuraル・シネマがスクリーン内での食事を禁止している点にも繋がる話。
鑑賞中の食事が「悪」と言いたいわけではない。が、ことBunkamuraル・シネマで上映される類いの作品に関して言えば、向き合う上でそれ相応の集中力が求められることが多い。迂闊にポップコーンなど食べようものなら、途端に集中力の糸は途切れてしまう。だからこそ、大人のムードや気品が漂うロビーの空間作り然り、スクリーン内での食事NG然り、鑑賞前から自ずと身が引き締まる方へと観客を導いてくれている。
事実、そうして僕はここでたくさんの良き映画と巡り会い、その多くがこの心に刻まれている。「映画を集中して楽しんでいただきたい」と語る岡田さんの笑顔は、とても素敵なものだった。
数多の人々が行き交う渋谷の街。その喧騒や混沌から抜け出し、奥深い映画の世界へと誘ってくれるミニシアター「Bunkamuraル・シネマ」。日頃シネコンにしか足を運ばない方には是非訪れていただきたいのはもちろんのこと、より集中して映画と向き合いたい方にもおすすめの劇場です。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪
ここからは、花柳のぞみが「Bunkamuraル・シネマ」の見逃せないところをご紹介します。
題して、「はなやぎのビビっとポイント!」
注目して欲しいのがこのシートの色!青ベースのシートにピンクや黄色、緑の糸が施されています。座席もル・シネマの上質な空間を作る大切な1ピースなんですね!!
映画が始まる前はもちろん、終わった後もロビーでお酒やスナックをぜひ!映画だけでなく、一日を楽しんでもらえるようにという劇場の愛を感じます♪
これはぜひ行って見て体験して欲しいのですが!今回の花柳的イチオシはこのフカフカ絨毯と壁のデザイン!どこまでお洒落なんだっっ!ル・シネマ!
他の劇場ではお目にかかれない作品が豊富なル・シネマ!オンラインチケットも便利で良いけれど、ル・シネマだからこその作品の前売り券をぜひゲットしてみては!!
花柳さん、ありがとうございます! 「Bunkamuraル・シネマ」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。 次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。 ぜひお楽しみに♪
ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー 1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。
花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優 1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。
記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル
今回の記事を含む、ミニシアター限定のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」9月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン9月号(vol.12)、9月5日発行!表紙・巻頭は『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井昌秀監督×岸井ゆきの
お近くに配布劇場が無いという方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。