志田彩良×外山文治 ─ 世代を担う一等星になるだろう 外山文治監督の「きとらすばい」

外山文治


外山文治監督が、これからの映画シーンで活躍する高いポテンシャルを持った「きとらすばい(きてるぞ!)」な俳優をご紹介します!今回のゲストは志田彩良さんです。

新星は一夜にして誕生するわけではない。見えないところで光り輝く時を待ち、ある日を境に強烈な閃光を放つ。それを私たちは新しく現れた星のように錯覚するだけのことである。「宇宙の秘密は、緻密な蜂蜜」とは映画『月とキャベツ』のセリフの一つだが、「きとらすばい」な俳優もまた緻密で数奇な運命によって私達の前に現れてくれる。ということで、今回は『月とキャベツ』が最も好きな映画だという志田彩良さんにお越しいただいた。志田さんは現在次々と話題作に出演する映画界注目の女優である。

「この世界に入ったのは小学校六年生の頃です。いくつかスカウトして頂いて、次第にやる気が芽生えてきた時に、今の事務所に声をかけて頂きました。そこから14歳くらいまでは演技レッスンをしていました」


志田さんとは今回が初対面だが「実は5年前に映画の舞台挨拶で志田さんを見てるんですよ。写真フォルダにもデータが残ってました」と、私は17歳で初主演した映画『ひかりのたび』の舞台挨拶の初々しい写真を見せた。当時も新星だと感じたが、その後、今泉力哉監督の『mellow』『かそけきサンカヨウ』の好演やドラマの出演でブレイクしていくことを思うと、やはりヒロインは一夜にしてならずである。

さて、これまで様々なタイプの役を演じてきた彼女だが、実際はどういう方なのだろうか。

「私自身は、今まで演じたどのタイプのキャラクターとも似ていないかもしれないです。サバサバしているわけでもなく、おっとりした人間でもないですし(笑)。身近な人たちからは、会った方が好きになれるって言って貰えるんですけど、写真とか映像だけの世界ですからそれも難しいですよね。でも、ありきたりですけど、求められる役者になりたいんです。自分の性格とは違っても色々な性格の役を演じてみたいと思います」


自分の想いを丁寧に伝えようと言葉を大事に紡ぐその姿に芯の強さを感じる。そして穏やかで優等生な印象とは裏腹に、今回、俳優業に対する想いの強さが垣間見えるやりとりがあった。それはオーディションについて話していた時のことだ。

「今も悔しいことは多いです。オーディションも最終選考までは残るんですけど。最後の一人か二人で他の子に役が決まることはあって。自分の何がダメだったのだろう、原因はなんだろうと、ずっと考えています」

多分、本当は原因などないのだ。オーディションとは不思議なもので、最後の数人に残る人は、いつだって同じ顔ぶれであることが多い。あとは選ぶ側の好みでしかなく、だからこそ大切なのは最後まで残れる実力があるかどうかだ。結果については潔く忘れて次に向かった方がいいのだと私は助言した。

「でも、私は他の人に決まった作品は絶対に見るんですね。ちゃんと見て、どんなお芝居してるんだろう、自分には何が足りなかったのだろうって考えるんです。そしたら納得させられることが多くて。ああ、この役はこの人で良かったんだなって、理解できて安心するんです」

その言葉に私は感嘆する。傷つきながらも納得するまで現実と向かい合う気持ちの強さに惹かれる。新星としての輝きを放つ志田彩良さんの放熱の証を、私はこれからも観てみたいと思った。

「いつか自分のイメージをガラッと変えるような役に出会ってみたいです」

最後に志田さんはそう言って微笑んだ。運命の役との出会いが彼女に訪れた時、新星は世代を担う一等星になるだろう。

志田彩良
しださら|俳優
1999年7月28日生まれ。神奈川県出身。2014年に短編映画「サルビア」で俳優デビュー。ドラマ「チア☆ダン」、「ゆるキャン△」シリーズ、主演映画『かそけきサンカヨウ』など数々の映画やドラマに出演。2021年TBS系日曜劇場「ドラゴン桜」で秀才女子、小杉麻里役を演じて脚光を浴びる。また、2022年10月期のTBS火曜ドラマ「君の花になる」に、池岡奈緒役としてレギュラー出演。

外山文治
そとやまぶんじ|映画監督
1980年9月25日、福岡県生まれ宮崎県育ち。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。

撮影・文 / 外山文治

今回の記事を含む、ミニシアター限定のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」9月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン9月号(vol.12)、9月5日発行!表紙・巻頭は『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井昌秀監督×岸井ゆきの

お近くに配布劇場が無いという方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。

外山文治 映画監督

1980年9月25日生まれ。福岡県出身。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。

この連載の人気記事 すべて見る
今読まれてます RANKING