吉田仁人の人生を変えてくれた映画『レオン 完全版』 2021.5.21
僕が自分の人生で語れる期間は、まだ21年分しかない。もしかすると「人生が変わる」瞬間はまだ迎えられていないのかも…なんて思いながらこのコラムを書いている。このどうしようもない不安が伝わるか分からないが、まだ若輩者の僕が、出会えて本当に良かったと思っている映画『レオン 完全版』を紹介したいと思う。最後まで読んでいただけると嬉しい。
この作品の主人公であるレオンはプロの殺し屋。「殺すのは女と子供以外」というルールを自分に課し、雇い主であるトニーの依頼を受ける。そんな中、同じフロアに住む少女・マチルダの家族がスタン率いる麻薬取締局に殺されてしまう。お使いを頼まれ、運よくその場にいなかったマチルダはレオンの家に逃げ込み、愛する弟のかたきを討つ為にレオンとの同居生活を始める。
冒頭ですべてが決まる
©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN
本作の冒頭10分間には、主人公レオンの圧倒的なオーラと、歯向かうことのできない無敵さが詰め込まれている。たちまち物語に引き込まれるのだが、僕はかつてダンスコンテストで審査員から聞いた言葉を思い出す。
「曲が始まって5秒見ればすべてが分かる」
僕が幼い頃から励んでいたダンス。数十チームが競うコンテストで腕試しをすることも多々あったが、この言葉は今でも忘れられない。
映画とダンス。形は違えど作品は作品。冒頭ですべてが決まってしまうのだ。『レオン 完全版』を見るたびに、いつも初心を思い出すことができる。
僕の固定観念を壊してくれた
殺し屋と聞くと、まるで感情のない殺戮マシーンや、殺しが生きがいのような奇怪な人間、他にも言い出すときりが無いほど冷酷なイメージを持つはず。僕もそうだった。
だけど、レオンはかつて僕が思っていた殺し屋とは違う。人間味にあふれ、仏頂面の奥に優しさを秘め、深い愛情、そしてユーモアを持っているのだ。
©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN
同じく少女マチルダからも衝撃を受けた。ナタリー・ポートマンの魅力はこのときすでに確立されていた。気を抜くと少女であることを忘れてしまうほど妖艶だ。
彼女が劇中で見せる様々な表情、仕草が、レオンの心を開かせ、見るものに感動を届けてくれる。言うまでもなく1人の役者として尊敬している。
つまり、本作は僕の固定観念を壊し、型にはめて考えていてはダメだと気づかせてくれた。
イメージを良い意味で壊す一面を僕も持てるように精進していく。
さいごに
今ではこうして映画のコラムを書く機会をいただいているが、自分としてはまだまだ知識も、それを伝える説得力も足りていないと思っている。勉強もしつつ、はじめに抱いた「映画の面白さ」を失わない様に、いつまでも映画ライフを楽しんでいきたい。
『レオン』が日本で公開されたのは1995年。僕が生まれる4年前。今も色褪せない名作誕生の時に、僕は立ち会えなかったのだ。映画史、というと広くなりすぎるし言葉の選び方が慎重になってしまうが、今も僕が知らないorまだ見ていない名作達がたくさんあるのか…と思わせてくれたのが本作だった。そこから僕は映画により興味を持ったことを覚えている。
©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN