『背』 童貞青年を襲う謎の恐怖!

ミヤザキタケル

高校を卒業したてのさえない童貞青年たちの青春コメディ映画!と見せかけて、意外や意外、まさかのサスペンス、ミステリー、さらにはバイオレンス要素まで内包した摩訶不思議な作品となっている。PFFの入選作品に、こんな上質なB級映画があったとは…。

日常が次第に非日常へと変化していくストーリー展開において、まず日常における男たちの描き方が心地良い。安全ピンでビビりながらピアスを空けようとしたり、カラオケで男だけではしゃいだり、女子と接点を持ちたくて堪らなかったりと、さえない青春時代を過ごしてきた者であれば身に覚えのある青さが詰まっている。また、卒業式を終え、次の進路へ進むまでの極僅かなインターバル。高校生活が終わった寂しさや、これから訪れる新生活を前に、期待や不安が入り混じるあの稀有な時間にスポットを当てている点がめずらしく、不思議と興味を引かれてしまう。

そして、そんな懐かしく微笑ましい時間に、不穏な気配が漂い始めてくるのが、これまたおかしくて引き込まれていってしまう。あなたの楽しみを奪いたくないので、先の展開については触れないが、週末の夜にお酒でも飲みながら見るのにピッタリの楽しい作品である。

©Gucchon Pix Entertainment

ミヤザキタケル 映画アドバイザー

WOWOW、sweetでの連載のほか、各種メディアで映画を紹介。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』がバイブル。

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