料理と家族とSNSが一人の男を救う物語『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』 2021.2.15
何かやらなくてはいけないこと、取り掛からなくてはいけないことがあるとき、「やらなきゃ」と思いながらも気持ちが乗らず、自分の中の「渋り」が本領発揮してくるときがあると思う。
最近の僕は、そう思いながらもまずは体を動かすようにしている。怠惰な脳みそに、体まで支配できるほどの力はない。もちろんボルテージ最高潮Ver.のときの僕と比べたら性能は劣るが、だらだらとYouTubeを見ている時間に比べたら、こなせる仕事の量が違ってくる。
だから、まずは動くようにしている。
あと、特に嬉しいことがなくても口角を上げるようにしている。すると不思議なもので脳みそは楽しいと勘違いするらしい。
だから、家の中の吉田はいつも変な顔だ。
さて近況報告はこれくらいにするとして、今回は『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を紹介したい。『アイアンマン』シリーズ監督のジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演を務めた2014年の作品だ。
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【あらすじ】
ロサンゼルスの一流レストランで総料理長を務めるカール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、大物料理評論家ラムジーの来店を新作の料理で迎えようとするが、挑戦より伝統派のオーナーと対立して店を辞めてしまう。さらに始めたばかりの不慣れなTwitterでラムジーの評価に口汚く反論し、シェフ生命が危うくなってしまう。そんな中、息子の子守りで行ったマイアミで絶品のキューバサンドに出会い、フードトラックを始める決意をする—。
美味しそうな料理の数々
タイトルの通り、この映画では美味しそうな料理や調理シーンが終始でてくる。一流レストランでお客様へ、自宅で息子に、そしてフードトラックで街行く人に。
そのすべての料理が華やかであり、美味しそう。見ていると腹が減ってしまう。そして、何よりそれらを調理するカールがとても活き活きしているのだ。
動作の一つ一つが板についていて、見惚れてしまうほど。
SNSの炎上が招く挫折
料理だけではない。この映画でもう一つのキーとなるのは「SNS」だ。
今では知らない人はいない「Twitter」や「Instagram」。手軽に思いや近況を投稿できるが、内容によっては自分の社会的信頼を失いかねない危ないものだ。
簡単に言うと「炎上したら終わり」。
本作でも、カールは基本的なルールを教わらないまま、息子のパーシーにアカウントを作ってもらい、大失敗してしまう。
カールは自分の料理を批判した評論家に返信するが、その内容があまりにも酷く、またたく間に炎上するのだ。
カールは料理のことになると周りが見えなくなる。無邪気て、負けず嫌いで、少年のよう。言い換えると大人げないのだ。
大人のふりをする息子・パーシーに注目
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それに比べてカールの息子・パーシーは、10歳ながらとてもおとなしい子どもだ。
僕自身も子どものころは、パーシーのように大人のすることに憧れていたし、大人のふりをしたり、知ったかぶりしていたような気がする。
だからこそ、パーシーの落ち着き払った雰囲気にグッとくるものがあった。
パーシーの行動や心境を書こうとするとネタバレになるので言えないことがたくさんある。ぜひ彼に注目しながらこの作品を見てほしい。
仕事での挫折、家族との関係などの重めのテーマながら、音楽がとにかく陽気でおしゃれな曲ばかりで気分が上がるし、繰り返しになるけど料理は美味しそうだし、自然と口元がほころぶ作品になっている。
SNSの利便性と危険性、家族の在り方、挫折から立ち直る様など、考えさせられることが多いとても素敵な物語だ。
見終わってから作る夕飯は、包丁の入れ方が変わっているに違いない。
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