窪塚愛流×外山文治─骨のある役者になりたい 2024.12.11
舞台を終えたばかりの彼は照れ臭そうに笑った。俳優・窪塚愛流。デビューして二年、出演作は続き映画『少女は卒業しない』『ハピネス』『恋を知らない僕たちは』など常にスクリーンを彩り続ける逸材である。憧れた父親の背中を追うように18歳で始めた俳優業は、彼にとって自分自身を証明するために必要不可欠なものだった。
「窪塚洋介の息子だと言われてしまうことは、もう受け入れています。もちろん最初は寂しい気持ちもありました。僕を見ていない。みんな僕を通して親父を見ている。でも俳優業を選んでいなくても同じじゃないですか。だったら受け入れて、そこから自立しようと思いました」
最近、あるオーディションを勝ち抜いて、ようやく自分自身を信じることができると胸を撫で下ろした。「めっちゃ嬉しかったんです」と安堵し目を細める彼は、本当にひとり孤独な戦いを続けてきたのだろう。
幼い頃から心の奥底にある世界観を表現する術を探していた。現実には有り得ないもの、起こり得ないことに惹かれて空想するのが好きだった彼は、内に秘めたる形のないものを表現したい衝動に駆られ、それと向かい合う間は安心できて気持ちを落ち着かせることができたという。
「人前に出るのは恥ずかしいですが、やっぱり見てくださるのはありがたいです。すべてのものを受け入れた時、生まれるものは感謝だと思います」
心が定まった彼にとってこの世界は刺激に満ちていた。これまでは大きな父の背中で見えなかったが、才能ある先輩たちが沢山いることも分かってきた。
「渡部篤郎さんと一緒にお仕事をさせて頂きましたが、存在感が凄かったです。さらりと沢山のアドバイスをくださって、密かに師匠のように思ってました」
そして今、舞台という新しいジャンルに足を踏み入れたことで、成長が加速していく実感があるそうだ。
「改めて、始まったな、という感覚があります。これまでも無我夢中で走ってきました。舞台を初めて経験してまた芝居が楽しいと思えるようになりました。感情をお客様に直接伝えられて、受け取ってもらえている。反応をダイレクトに感じられる。ほんとうに、最高だなと思います」
華やかな世界に身を置きながら、上京後の彼は普段家にいることが多いのだそうだ。料理をして、ギターを弾いて、自分を見失うことはない。SNSを開くと良いことも悪いことも目に入るが、「他人の声は無視してもいけないですが、そればかり気にするのは違うと思っています。自分の感情や向き合い方が大切です」とブレることはない。でも同年代の活躍には「基本的には焦っています」と本音も教えてくれる。
これからの映画界を支えていくであろう逸材には、大人びた感性と無邪気な心が同居していた。夏祭りも海もない、芝居に身を捧げた青春の時を経て、これからどこまで伸びていくのか、私は楽しみでならない。
「有名になりたいって気持ちで入った世界ではないですから。僕は芯のある確固たる男を貫いていきたいです。骨のある役者になりたい。僕たちの世代でも最高なものを作っていきたいなと思います」
外山文治
そとやまぶんじ|映画監督
1980年9月25日、福岡県生まれ宮崎県育ち。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。2023年公開の最新作『茶飲友達』は都内1館のスタートから全国80館以上に拡大公開され話題となる。
窪塚愛流
くぼづかあいる|俳優
2003年10月3日生まれ、神奈川県出身。2021年から本格的に俳優活動を開始。2024年には映画『ハピネス』で初主演。最近の出演作にドラマ『最高の教師1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)、映画『恋を知らない僕たちは』など。今年は初舞台となる『ボクの穴、彼の穴。W』にも挑戦。その瑞々しい存在感と演技を着実に成長させている。
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1980年9月25日生まれ。福岡県出身。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。