東京で唯一の木造建築映画館「シネマネコ」を訪問! ー ミヤザキタケルのミニシアターで会いましょうwith花柳のぞみ

ミヤザキタケル
花柳のぞみ

映画アドバイザー・ミヤザキタケルさんが、俳優・花柳のぞみさんと一緒に全国津々浦々のミニシアターを巡り、各劇場の魅力や推しポイントをお届けします。目指すは全国のミニシアター制覇♪

ミヤザキタケル

今回は東京の西端に位置する街・青梅に誕生したミニシアター「シネマネコ」にお伺いしました。


東京は目黒区で暮らす僕にとって、映画館は身近なものであり、新宿・渋谷・池袋を巡れば、その時期に公開されている作品は大体観ることができてしまう。しかし、お住まいの地域によっては当然事情が異なる。映画館は身近なものであるとは限らず、場合によっては車で数時間かけねば訪れることができない方も中にはいる。その街にはかつて3つの映画館があり、「映画看板の街」としても多くの人に親しまれてきた。しかし、50年ほど前に3館とも閉館。地元の映画看板師が亡くなったのを機に、駅前に設置されていた数々の映画看板も撤去されてしまった。そうして映画の灯は完全に消え去ったかに思われたが、2021年6月、新たな灯がともされた。東京の西端に位置する街・青梅に誕生したミニシアター「シネマネコ」である。


東京で唯一の木造建築映画館であるシネマネコ。繊維試験場として使用されていた国登録有形文化財の貴重な木造建築物をリノベーションして作られており、一歩足を踏み入れると木特有のやさしい香りに包み込まれる。開放感のある高い天井や外光をたっぷりと取り込む大きな窓も相まって、とても穏やかな気持ちにさせてくれることだろう。


支配人である菊池康弘さんは、20代の頃に俳優・上川隆也さんの付き人をされながら俳優として映画やドラマで活躍。28歳で地元・青梅に戻り飲食店を開業。年配のお客様から耳にした「昔は青梅も映画の町として賑わっていた」「青梅に映画館があったら嬉しい」という言葉がキッカケとなり、青梅の街に再び映画館を復活させようと構想。

都心へ足を運びがちな若者が地元にいながら楽しめるクリエイティブな場所や拠点として映画館が適している点や、俳優業を通してエンタメの力がもたらす影響力を誰よりも知っていたからこそ、エンタメの力で青梅を盛り上げようと4年前にプロジェクトをスタート。「シネマネコ」の名は、青梅がかつて織物業で栄えていた時、ネズミ退治のための猫がたくさんいたことに由来する。青梅市が持つ文化的背景を活用したサスティナブルなデザイン性が評価され、2021年にはグッドデザイン賞を受賞するに至っている。


劇場の座席数は63席。2018年に閉館した新潟の十日町シネマパラダイスから譲り受けたフランス製キネット社の座席を使用しており、サウンドスクリーンは5700mm×2550mm、音響はDolby surroundと設備面も最新のものを採用。スクリーン内の天井にも梁があり、木の香りに包まれている。上映作品は、外国映画・邦画・アニメ、シネコンでかかるような大作からインディーズ作品、往年の名作に至るまで多種多様なラインアップとなっており、お客様からのリクエストも受け付けている。


都心で公開された作品を後追いする形での上映スタイルのため、目当ての作品を見逃した方が足を運ぶケースも多いようだ。また、頻繁にゲストを招いてのトークイベントも開催されており、劇場の受付にはこれまでシネマネコを訪れた映画人のサインがたくさん飾られている。


映画館内にはカフェも併設されており、壁一面に設けられた棚には映画関連書籍をはじめ、青梅の歴史や猫関連の書籍も多数置かれている。上映前後の利用はもちろんのこと、カフェのみの利用もOKなので、是非お気軽にご活用いただきたい。マスコットキャラクターの金ちゃん銀ちゃんをはじめとするキュートな猫アイテムなど、シネマネコ公式グッズも販売中なのでこちらも要チェック♪


そして、11月18日には、シネマネコ初の封切り作品となる映画『光の指す方へ』が公開(2022年12月3日より全国順次公開)。浪人生の主人公が、映画館をオープンした姉の手伝いをすることになり、映写技師や常連客たち、35mmフィルム映写機が指すまっすぐな光との出会いを経て変化していく姿を描いた作品なのだが、シネマネコが名称もそのままにロケ地として使用されている。


©Itoo office inc

作品のプロデューサーである伊藤竜也さんもかつて上川隆也さんの付き人をされており、菊池支配人とは旧知の仲。シネマネコ立ち上げの際、映写技師としての経験を持つ伊藤さんに相談したのを機に再び連絡を取り合うようになり、そこから今回の企画が生まれたとのこと。劇場へ直接足を運ぶのが難しい方や、関東圏外にお住まいの方は、『光の指す方へ』を通してシネマネコの空気感を感じ取っていただきたい。11月27日には、劇中よろしく35mmフィルムの上映イベントも開催されるので、日頃味わう機会のないフィルム上映を体験できる貴重な機会をお見逃しなく!


コロナ禍という逆境の中でのスタートながらも、「逆境時であるからこそやりがいがあり、誰もできないことをやることに意味がある。」と語る菊池支配人。その土地に宿る歴史を重んじ、地域活性化にも注力しつつ、エンタメの力、映画館が持つポテンシャルを信じ、若い世代にも映画の素晴らしさを届けようとチャレンジを続けるシネマネコ。その空間がもたらす温かさと、その成り立ちに宿る情熱。異なる熱を宿した魅力溢れる映画館へ是非一度足を運んでみてください。それでは、次のミニシアターでまたお会いしましょう♪

花柳のぞみ

ここからは、花柳のぞみが「シネマネコ」の見逃せないところをご紹介します。題して、「はなやぎのビビっとポイント!」


シネマネコに入った瞬間に感じる木の匂い。どこか懐かしくて、安心します。誰でも気軽に入れるような建物だから、思わぬ形で映画と出会う。映画との出会いを優しく提供してくれる空間です。


座席のドリンクホルダーの底がコルク!!こういう細かな工夫、個人的にかなりツボ!!キュンとしてしまいます〜!!


『ローマの休日』でお馴染みの真実の口が!!これは良き写真スポットですね〜。私もちゃっかり、、、♡♡


シネマネコのカフェにはネコモチーフのメニューが!私が食べているのは、フレンチトーストとカプチーノ。かわいい〜♡映画終わりにカフェでまったり語らうなんて、最高じゃありませんか!

ミヤザキタケル

花柳さん、ありがとうございます!「シネマネコ」にはまだまだ魅力的なところがたくさんあるので、ぜひみなさんも探してみてくださいね。次回はどんなミニシアターにお会いできるでしょうか。ぜひお楽しみに♪

ミヤザキタケル
みやざきたける|映画アドバイザー
1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweet・PHILE WEBでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

花柳のぞみ
はなやぎのぞみ|俳優
1995年、秋田県出身。趣味は、カメラとおさんぽ。主な出演作に映画『人狼 デスゲームの運営人』メインキャスト・姫菜役、YouTubeドラマ、TOKYO MX「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」保田紘子役。現在、「NURO モバイル」web CMに出演中。

記事内写真 / 花柳のぞみ
文 / ミヤザキタケル

今回の記事を含む、ミニシアター限定配布のフリーマガジン「DOKUSOマガジン」11月号についてはこちら。
⇒DOKUSOマガジン11月号(vol.14)、11月5日発行!表紙・巻頭は寺島しのぶ!

お近くに配布劇場が無いという方は「DOKUSOマガジン定期購読のご案内」をご覧ください。

ミヤザキ タケル 映画アドバイザー

1986年、長野県生まれ。WOWOW・sweetでの連載の他、web・雑誌・ラジオで映画を紹介。イベント出演、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジェ」など幅広く活動。

この連載の人気記事 すべて見る
今読まれてます RANKING