髙石あかり×外山文治 ─ 同じ中学校出身だからこそ 外山文治監督の「きとらすばい」 2022.8.19
外山文治監督が、これからの映画シーンで活躍する高いポテンシャルを持った「きとらすばい(きてるぞ!)」な俳優をご紹介します!
アニメ『耳をすませば』の主題歌は、夢を目指すが故に故郷との決別を歌ったものだった。ひとりぼっちを恐れずに生きようと決意する主人公の姿に感化された中学生の私は、宮崎市の小さな街で映画監督を志すことを心に決めた。それはまるで神様との約束のような純粋な誓いだったと、今回の対談が思い出させてくれた。
今月のゲストは宮崎出身の髙石あかりさん。「ベイビーわるきゅーれ」の好演も記憶に新しいブレイク必至の女優である。初めてお会いした髙石さんは玲瓏とした雰囲気を纏っていて、そのキャリアを静かに語ってくれた。
「保育園の時には女優になりたいって言ってたみたいです。事務所の情報も自分で見つけて、中学生になると学校とレッスンを行ったり来たりで忙しくて。それで高校からは東京に来て活動しています」
「髙石さんは宮崎のご出身なんですね。どこの中学校ですか?」
「はい。宮崎中学校です」
驚いた。後輩だ。母校から女優が誕生した。髙石さんも目を丸くする。それで、お互い思わず吹き出してしまった。クールな印象だった彼女が屈託なく微笑む。「ごめんなさい。実は私、緊張してたんです」と彼女は19歳らしく戯けてみせた。
「この仕事を選んだのは、もちろん親の影響もありましたがほとんど私の意志です。子供の頃からテレビを見て、女優さんと一緒になって笑ったり泣いてみたりして遊んでました。あ、私の方が早く泣けたとか。こういう喋り方をすればこう伝わるのかとか。ダンスとボーカルの練習や活動もしていましたけど、女優への憧れはずっとありました」
それにしても、時代が違うとはいえ、母校のあの学舎で授業を受けながらここまでの行動を起こせた生徒がいたとは驚きである(実は当時の私も彼女の所属するエイベックスに入って小室ファミリーになることに憧れていた)。彼女の想いの強さを証明するかのように、『とおいらいめい』(8月27日公開)、『ある用務員』そして『ベイビーわるきゅーれ』と出演作は繋がり、今後も待機作が複数あるのだという。
「『ベイビーわるきゅーれ』は印象的な役柄だったね。時代の空気感も捉えていたし、殺し屋なのに女子高生で、メイド喫茶でバイトするという映画に必要な掛け算もハマっていた。撮影時から話題作になる手応えはあった?」
「現場の初日が終わった後で、これは面白いぞと皆に火がついた感じでした。監督の世界観を理解できて作品への愛が高まって。大きな現場ではないので、全員で作りあげた気持ち。それが良かったのかな」
そんな当たり役はファンの熱望もあり待望の続編が作られるのだそうだが、本人には不安もあるらしい。
「前回の撮影は夢中で。作り込んでいった役柄じゃなかったし、感覚的に演じたところもあって。そういう無意識なものをもう一度コントロールできるのかな」
複雑な思いを吐露する彼女だが、誰にも負けない情熱があるならば、どんな困難も乗り越えていきそうな予感がする。プレッシャーだってエネルギーに変えていけるはずだ。最後に私は髙石さんにこれからの夢を聞いてみた。
「芝居をずっとしていたいです。いつか朝ドラのヒロインもしたいなと思いますし、重くて暗い役も、青春のど真ん中の役も演じたい。それと宮崎で映画を作りたいです!」
その時は私も先輩として監督に立候補してみたい。帰りたくても帰れなかったカントリーロードに後輩が連れてってくれるのならば、こんな素敵なことはない。
外山文治
そとやまぶんじ|映画監督
1980年9月25日、福岡県生まれ宮崎県育ち。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。
髙石あかり
たかいしあかり|俳優
2002年12月19日生まれ。宮崎県出身。2019年女優活動を本格化。2020年舞台「鬼滅の刃」で竈門禰豆子役に抜擢され話題を集める。近年の映画出演作品に『ある用務員』、『ベイビーわるきゅーれ』がある。8月27日より『とおいらいめい』が公開するほか、8月9日より放送のMBS/TBSドラマイズム「生き残った6人によると」にレギュラー出演中。
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撮影・文 / 外山文治
1980年9月25日生まれ。福岡県出身。短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映。長編映画監督デビュー作『燦燦ーさんさんー』で「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。