高柳明音「50年前にもあおり運転を描いた作品があったんですね!」『激突!』

高柳明音
坪井篤史

高柳明音さんが、シネマスコーレ副支配人の坪井篤史さんを師匠にお迎えし、映画マスターを目指します。第11回は、スティーブン・スピルバーグ監督の長編デビュー作にして名作スリラーの『激突!』です。

©1971 Universal Studios. All Rights Reserved.

『激突!』
Blu-ray: 2,075 円 (税込) / DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
©1971 Universal Studios. All Rights Reserved.

あらすじ
商談に向かうため、ハイウェイで乗用車を走らせていた男。彼は、前をゆっくりと走っていた古びた大きなトラックを追い越すが、そのトラックは怒ったように彼の車を抜き返す。トラックの悪意に気づいた男は愕然とするが、それは恐怖の始まりにすぎなかった。トラックは執拗に男の車をつけ狙い、獰猛な怪物のように男を殺そうと迫ってくる…!

坪井篤史

夏なのでホラー作品をと思ったのですが、ホラーは大の苦手とお聞きしていたのでサスペンス作品から選んでみました。スティーブン・スピルバーグ監督のデビュー作にして超名作『激突!』です。本作は、姿の見えないタンクローリー運転手にあおり運転され、命を狙われる男の恐怖を描いています。ご覧になっていかがでしたか?

高柳明音

夏は怖い作品が来ると思って構えていたのですが、すごく楽しめました!

坪井篤史

あれ? タンクローリーのあおり運転に恐怖を感じなかったですか?

©1971 Universal Studios. All Rights Reserved.

高柳明音

もちろん怖かったです。でも、私は車の免許を持っていないからか、あおり運転される恐怖よりも音楽の方が怖かったです。スピルバーグ監督の『ジョーズ』のテーマ曲は有名ですけど、本作もホラー映画に近い音の使い方と言いますか。

坪井篤史

なるほど! 運転する人、しない人で恐怖の感じ方の違いはありそうですね。一言で言ってしまうと「タンクローリーを抜かしただけ」なんですけど、それが原因で大変な目に遭うことに。主人公のデイビッドにはどんな印象を持ちましたか?

高柳明音

あおり運転をされて気の毒なんですけど、ちょっと性格の悪そうな感じもあったかと。(笑)

坪井篤史

被害者なのは間違いないですけど、もしかすると普段はあまり良い人ではないのかもと思わせる場面がありましたよね。

高柳明音

そうなんです。序盤のシーンで犯人はお前だと決めつけて乱暴な言動をとるところは、そんなことしたら誰でも怒るよ!って笑ってしまうほどでした。

坪井篤史

タンクローリーの運転手が誰だかわからない状況で、疑心暗鬼になってしまう。シリアスな場面のはずなのに、デイビッドの妄想が加速していくところは面白さすら感じる。このあたりがスピルバーグの上手さ、絶妙な緩急の使い方ですよね。

高柳明音

タンクローリーがしつこく追いかけてくると見せて、故障して困っているスクールバスを助けたりして、もしかして運転手は良い人なの?と観ているこちらとデイビッドの気持ちを弄んできますよね。

坪井篤史

逆に怖いですよね。謝ったら許してもらえるのか、お金で解決できるのか、いろんな妄想をするデイビッドを逆なでしてくる。お前だけは許さないと言われているような。

高柳明音

人って、嫌いな人に対してはとことん嫌いになれるというか、いくらでも腹を立てていられるのかと思うと怖いですよね。でも自分にとって害のない人には優しくする。タンクローリーの運転手を純粋な敵として描いているなら憎むべき存在なんですけど、その人なりの正義があるから余計に怖い。

坪井篤史

運転手の顔が見えないので犯人像がわからない。でも高柳さんの言う通りで、スピルバーグとしてはタンクローリーを恐怖の象徴として描きつつも、運転手は普通の人間としても見せたいわけです。デイビッドの心情だけを描いても物語としては成立するけれど、犯人=悪人と思ってはいけないよと。だからこそ後半の大バトルが活きてくる。そこがまさしくスピルバーグの映画なんですよね。

高柳明音

全編通してサスペンスでありながら、中盤からの目まぐるしい展開はまさにアクション映画でした。ひとつ気になっていることがあって、タンクローリーにナンバープレートがいくつも付いていたんですけど、もしかしてこれまで何台も同じことをしてきたのかなと…

坪井篤史

すごいところに目をつけましたね。その仮説は当たっていると思います。暗殺者が始末したターゲットの数だけタトゥーを入れるような、またはシリアルキラーのような。

高柳明音

これまで何台も壊してきたので今回も余裕だと思っていたら苦戦して、それでどんどんエスカレートしていったのかもしれないと思いました。

坪井篤史

確かに! ネタバレは避けますが、公衆電話での危機一髪のシーンは本当にぜひ注目してほしいところです。さて、『激突!』について色々とお話をしてきましたが、運転免許は欲しいですか?

高柳明音

欲しいです!今年中にはと思っているんですけど、ずっと東京にいることもあってタイミングがなくて。あと、私は通学だときっと挫折するので合宿で取れたらいいなと思っています。でもいつ取れるんだろう。むしろ人生の目標です。

坪井篤史

免許取得の目標、いいじゃないですか。スピルバーグは75歳ですけどいまでも映画をつくって、挑戦しつづけていますし、高柳さんもきっと免許が取れる日が来ますよ。免許を取ってからもう一度観ると、印象はガラっと変わるかもしれないですね。高柳さんは『激突!』で言えばどっちのタイプでしょうかね。

高柳明音

どっちでもないですよ!(笑) 映画と同じ目に遭うのは嫌すぎるので、時間に余裕をもって、広い道路で、ゆっくりドライブするのがいいです。もしくは車の少ない夜中とか。(笑)

高柳明音
たかやなぎあかね|1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。

坪井篤史
つぼいあつし|1978年、愛知県生まれ。シネマスコーレ副支配人。小3の時に映画と映画館の神様から啓示を受け、死ぬまで映画と映画館で生きると決めたアブナイ人。

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⇒DOKUSOマガジン8月号(vol.11)、8月5日発行!表紙・巻頭は『さかなのこ』沖田修一監督×のん!


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撮影 / 西村満 スタイリスト / 山川恵未 ヘアメイク / 牧口友紀(TOKYO LOGIC) 文 / 永井勇成

高柳 明音 俳優

1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。

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