高柳明音「ひとつひとつの言葉の意味を考えさせられる作品です」『舟を編む』 2022.5.16
高柳明音さんが、シネマスコーレ副支配人の坪井篤史さんを師匠にお迎えし、映画マスターを目指します。第8回は松田龍平さん、宮﨑あおい主演の名作『舟を編む』です。一心不乱に辞書づくりをする主人公・馬締を観ていると、五月病だなんて言ってはいられなくなるかも?
©2013「舟を編む」製作委員会
『舟を編む』
好評発売中
Blu-ray:5,170円(税込)
DVD:4,180円(税込)
発売元:アスミック・エース
販売元:松竹
©2013「舟を編む」製作委員会
『舟を編む』のあらすじ
出版社に勤める馬締光也は変わり者として持て余されていたが、言葉に対する天才的なセンスを見出され、新しい辞書「大渡海」を編む仲間として辞書編集部に迎えられる。個性派ぞろいの面々の中で馬締は辞書の世界に没頭しつつ、運命の女性、林香具矢に出会う。だが言葉のプロでありながら、彼女に気持ちを伝えるにふさわしい言葉がみつからない。果たして「大渡海」は完成するのか?馬締の思いは伝わるのか?
辞書を作る、そんな途方も無い仕事を描いた名作『舟を編む』をご覧いただきました。五月病という言葉がありますが、誰しも仕事が嫌になることってありますよね。本作はそんな気持ちを励ましてくれるほど、真正面から仕事に向き合う人々が出てきます。ご覧になっていかがでしたか?
タイトルからは想像できない内容でした。言葉を説明する、こんなに大変な仕事があるのかと。でも描かれている映像はどこか穏やかで、2時間以上あるとは思えないほど楽しく観ることができました。
本作で作られる辞書は、大きな海を渡ると書いて「大渡海(だいとかい)」と読みますよね。海を渡るには舟がいるわけで、その舟が松田龍平さん演じる馬締(まじめ)たち編集者のこと。そう考えると巧みなタイトルですよね。三浦しをんさんの同名小説を映画化したものですが、2010年〜13年の原作を映画化するブームの中で最も良い作品だと思います。
キャストのみなさんも豪華すぎて…。松田龍平さんはもちろんですが、宮崎あおいさんがやっぱり可愛すぎました。今ならきっと違うキャスティングになると思いますが、2013年だからこそ実現できたのかなと。
オダギリジョーさん、池脇千鶴さんなど、主役を張れる方が脇役で入っていることも魅力的ですよね。特にオダギリジョーさんが演じた西岡は、みんなが好きになるキャラかと。そんな仲間と一緒に辞書をつくる様子はいかがでしたか?
ひとつの辞書を完成させるのに10年、15年かかり、その期間をずっと描いていて、出てくる人も、辞書づくりの工程も変わらない。だけど最後まで楽しんで観ることができる。むしろ、作中に出てくるひとつひとつの言葉の意味を考えさせられました。知っている単語でも当たり前じゃない言葉で表していましたし、日本語へのリスペクトを感じてとにかく辞書を読みたくなりました!
やっぱり! 読みたくなりますよね〜。観た方ならわかると思いますが「血潮」を探しちゃうと思います。
そして「右」もですよね!
辞書ごとに「右」の説明が違うことに驚きますよね。あと、先ほど高柳さんも言われましたが、本作はドラマらしいドラマがあまり起きないんですよね。いくらキャストが豪華でも2時間以上も引っ張れるのかと不安になるのですが、これが不思議に、そして見事に成立する。
何も起きていないようで起きている。なんと言っても人間関係で心が苦しくなることがなくて良かったです。人物の心情もすごくきれいだったし、支えてくれる人と、ちゃんと感謝できる人。誰もが素敵でした。
そうなんです。悪人不在なんですよね。鶴見辰吾さん演じる編集局長が悪人に見えるシーンがあるのですが、やっぱり応援してくれますし。馬締も営業部では厄介者扱いでしたが、辞書づくりでは光り輝く。ものづくりにおいて、適材適所の方が必ずいると教えてくれる作品でもありますよね。ちなみにお気に入りのシーンはどこになりますか?
馬締と西岡が橋の上で会話をするシーンです。「絶対にわかりあえないわ〜」って言っていたのに、気がついたらどんどん友達のようになっていく。最後までわかりあえないのかな?って思っていたので、ちょっとした言葉の投げあいなんですけど、ここでの会話が良すぎてニヤニヤしちゃいました。
西岡と馬締が一緒に辞書づくりをしながら、お互いを認めあったとても素敵なシーンですよね。
そんな馬締さんの部屋が本しかないほどギュウギュウで、坪井さんのVHS部屋を思い出しちゃいました。(※坪井さんの映画VHS所有数は7,000本以上)
自分からは言いだせませんでしたが、観ていてシンパシーを感じました。(笑) 我々は映画で、そして彼らは言葉、辞書づくりで世の中を良くしたいと思っている人。とても響きましたし、好きなことを追いかけている人にこそぜひ観ていただきたいですね。
はい。私もこのお仕事を末永く続けて、本作の八千草薫さんのような素敵な女性になりたいと思います。
高柳明音
たかやなぎあかね|1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。
坪井篤史
つぼいあつし|1978年、愛知県生まれ。シネマスコーレ副支配人。小3の時に映画と映画館の神様から啓示を受け、死ぬまで映画と映画館で生きると決めたアブナイ人。
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撮影 / 西村満 スタイリスト / 山川恵未 ヘアメイク / 牧口友紀(TOKYO LOGIC) 文 / 永井勇成
1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。