芸能活動を辞めたとき、なんだかんだ映画を観ていた【中村優一、映画作ります。第1回】 2024.4.26
DOKUSOサポーターズでのブログから場所を移し、今後はDOKUSOマガジンwebにて月1回の記事形式でお送りしていくことになりました「中村優一、映画作ります。」の連載第1回となります。
2024年4月19日より、遂に初監督&初プロデュース映画『YOKOHAMA』が全国31館で劇場公開となった中村優一さんに、なぜ映画を作りたいと思ったのか、いつ映画を好きになったのか、映画作りへとつながるルーツをお聞きしていきます。聞き手は、DOKUSO映画館代表であり、『YOKOHAMA』のエグゼクティブプロデューサーでもある、たまい支配人がつとめます。
中村:まず俳優になったきっかけからお話していくのですが、そもそも僕は俳優になりたくはなかったんですね。どちらかと言うと、歌って踊りたかった。芸能事務所に入るきっかけも「ダンスがしたい」と言って事務所に入ったんですけど、最初にオーディションを受けたのが映画のオーディションで。なぜか最終オーディションまで残ったのですが、最後に落ちてしまったのがすごく悔しくて。俳優になりたい、演技をやりたいというよりもオーディションに受かりたいというところからスタートしたんです。
ただ、その後、運よくお仕事が決まっていって、その時はもうその場その場でやっていくしかなくて。学ぶ時間もなかったので、台本を前日に覚えて、翌日監督にご指導をいただきながら演技して、また次の日、といった感じで準備する時間もなく。毎日毎日台本とお芝居と戦うみたいな形で目まぐるしく日々が過ぎていったので、正直その頃の記憶がなくて。高校生のころから21歳くらいまでですかね。そして、一度芸能活動を辞めて、やっと時間ができたときに、なんだかんだ映画を観ていたんですよね。
玉井:どんな風に映画を観ていたんですか?映画館ですか?
中村:芸能活動を辞めた時はまだ配信とかがなかったので、家の近くのTSUTAYAでDVDやブルーレイを借りまくってという感じでしたね。その時に、もしかしたらまだ燃え尽きていないのかなとか、俳優というお仕事と向き合う時間が初めてできて。最初は映画が好きというより他の人のお芝居が気になったんですよね。そこからだんだん、映画って面白そうだなって、面白いなって思えたのがその時期でしたね。普通は逆じゃないですか、映画が好きだから役者を目指すのが多いですけど、僕はいろいろなご縁で進んでいってしまったので、映画が好きとか俳優の仕事が好きとかあまり感じられていなかった。
玉井:僕は関係者が多くて、なんだかあまり冷静に邦画を観られないんですけど、その当時はよく映画を観られましたね。
中村:そうなんですよね。若いころ活動していたときは邦画を観てしまうと胸が苦しくなったりしました。
玉井:いろいろ裏事情も見えてしまうしね。
中村:結局休めないというか、できるだけ他の人のお芝居を見たくない方だったんです。だから邦画も全然観ていなくて、どんな監督さんがいらっしゃるかもわからないし、どんな作品があるかもわからなかったんですけど、辞めてから復帰のめどが立ったくらいですね、ちゃんと邦画を観て勉強しなきゃと思いました。
最初は大作から観ていたんですけど、なんか物足りなくなって、インディーズ作品を観るようになって。お金があれば選択肢も増えるけど、インディーズ作品は予算がない中でエネルギーとパッション、脳と心をふり絞ってやっていて、少ない予算の中でどれだけ魅せられるかの戦いが楽しくなっちゃったんですよね。感動するときは、大作の2倍も3倍も感動できるので。
玉井:インディーズ作品にハマったきっかけの作品はあるのですか?
中村:インディーズ作品にはまったのは、内田けんじさんの『運命じゃない人』という作品ですね。あの映画を観たときに、画面に映るものから少ない予算で作っているのは窺えてしまうのですが、それを超えるような脚本のトリックとか演出とか監督の意図が見えたときに感動してしまって。
玉井:お話をお聞きしていると、だいぶ早い段階で、映画を作ることに興味を持ち始めたように思いました。TSUTAYAで借りて観ている時は俳優目線でしたが、インディーズ作品の話あたりからもう作り手目線でしたから。
中村:たしかに!!そうかもしれないですね。自分では意識してませんでしたけど、観る焦点がずれてきたというか。
あとは、名古屋の映画館シネマ・スコーレで坪井支配人と映画についてトークショーをさせていただいたり、身近でいうと俳優の西洋亮くんはきっかけの人物かもしれないです。西くんはすごく映画好きというかもはや映画オタクで、映画のことを聞けば100%返ってくる。二人でいつか映画を作りたいねということを溝の口あたりのカフェで語り合ったりしましたね。
玉井:それは何年前くらいですか?
中村:5、6年前くらいですね。でも、映画を作ろうと思った一番のきっかけは玉井さんとの出会いです!玉井さんがいなかったら、ヨリコ ジュン監督と映画制作できていなかった。『アタシ、キレイ?』を作ったことで全員に火がついて、そこからヨリコさんと自主映画をたくさん一緒に作らせてもらうことになって。ちょうどコロナが始まったばかりで仕事ができなかった時期だったので、僕の分岐点は玉井さんですね。
玉井:あら、嬉しい。
緊急事態宣言が始まったばかりのころに「今からヨリコさんを会わせたいんですけど」って、謎の電話がかかってきましたよね。
『アタシ、キレイ?』に関して、僕が何をしたってことはないですけどね、大してお金も出していないですし。
中村:作品内容自体にも刺激がありましたし、1テイクの映画の撮影風景を複数のカメラで生中継して見せてしまうっていう企画が楽しいなって思ったんですよね。みんながフルで頑張るって、なかなかないじゃないですか。普段自分が行っていた現場というのは、それぞれのポジションのプロがいて、僕は俳優のお仕事だけを頑張ってやるだけ。でも、そうではなくて、準備から何からプロデューサーの玉井さんも自らやったりして。僕、身体は疲れていたんですけど、心はすごく燃えたんですよね。終わったあともすごく気持ちよくて。
あのときの刺激がたまらなくて、そこから火がついて、玉井さんとヨリコさんと西くんの3人と出会えたから、映画を作りたいと言うか、現実に動けるようになったキーマンはその3人ですね。
玉井:僕が中村さんと出会ったきっかけは「VR演劇」ですね。2020年3月からの上演を予定していたけど、結局コロナで中止になってしまった。
中村:そうですね。舞台もできなくなったし、あのときコロナがなかったら映画作りをやっていなかったですね。今も普通にありがたく、いただいている俳優のお仕事をずっとやっているだけだったと思います。
玉井:お会いした時は、舞台はもうやりたくない感がだいぶ漂ってはいましたけどね。
中村:そうですね、インディーズ映画の話を玉井さんとしている方が楽しかったですね。
ずっと気になっていたんですよ、「DOKUSO映画館」。
玉井:よくご存じでしたね。サービスをローンチしてまだ二ヶ月くらいしか経ってませんでしたよ。2020年の1月23日にオープンして、中村さんとそのお話をしたのは3月末とかなので。
中村:玉井さんが作られた文章だと思うんですけど、「クリエイターに還元する」というのがすごく響いたんです。僕としてはたまらなくて、映画をすごく大切にしている方なんだなと思ったんですよね。
玉井:ありがとうございます。嬉しいです。
中村:そう考えると4年?
こうして話していると、けっこう長い年月経っているんだなと思いますね。
玉井:いろんなことがありすぎて、よくわからなくなっていますよね。
中村:やっとなのか、早いのかわからないですけど、自分で企画して監督した作品が全国公開というのは初体験なので、また楽しみですね、19日から。
玉井:次に何か計画されているんですか?
中村:そうですね、映画『YOKOHAMA』を通してやっぱり映画を作っていきたいなという気持ちがより増したので、次は長編に挑みたいと思います。具体的にはそこしか決まっていないです。
玉井:お金集めや企画開発など時間がかかる作業ですからね。企画開発だけでも1~2年。
中村:大変ですよね。本当にエネルギーの持続というところですよね、プロデューサーさんも監督も。
玉井:長いですよね。
中村:モノ創りには死ぬまで向き合っていきたいとは思っています。それ以外はあまり好きって思えないので、やっぱり好きなんだろうなと。
映画『YOKOHAMA』の制作は、人生で一番か二番目くらいに興奮していたと思います。楽しかったと胸を張っていえる期間でしたね。本当に楽しかったんですよね。
玉井:すごいですね!監督って、決断の連続じゃないですか。現場で決めないといけない責任者なので。その仕事を胸を張って楽しかったと言えるのは向いているんでしょうね。
中村:自分が撮りたい映像を、カット割もそうなんですけど、考えるのも本当にウキウキして。自分のお芝居のことを考えるより、カット割りや映像を考えるのが楽しい。初めてだったというのもあると思うんですけど、すごくウキウキしたんですよね。自分が観たい画を撮れるのが一番。その楽しさを味わってしまったので、何かきっかけがあったらまた挑戦したいなと思います。映画『YOKOHAMA』がスタートだと思うので、一歩ずつ前に進めたらいいなと思っています。
中村優一
なかむらゆういち | 俳優・映画監督
1987年生まれ、神奈川県出身。俳優。「死仮面」が初監督作品。
映画「大綱引の恋」、「八重子のハミング」、「永遠の1分。」、「風が強く吹いている」、「ウルトラマントリガーエピソードZ」、ドラマ「仮面ライダー電王」、「仮面ライダー響鬼」などに出演。
『YOKOHAMA』
出演:秋沢健太朗/高山孟久/賀集利樹 ほか
監督: 中村優一/ヨリコ ジュン/金子智明
2024年4月19日より、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿、UPLINK吉祥寺 他 全国ロードショー!
配給:エクストリーム
©2024 TerraceSIDE
横浜で生まれ、横浜を愛する俳優・中村優一が、さまざまな魅力にあふれた街、横浜を舞台に気鋭の才能たちとタッグを組んで映画を初プロデュース&初監督。“狂想”をテーマに、愛と不条理と狂気に満ちた3つの衝撃が、観る者を魅惑の映像体験に誘う、めくるめくドラマティック・サスペンス誕生!
1987年生まれ、神奈川県出身。俳優。『死仮面』が初監督作品。 映画『大綱引の恋』、『八重子のハミング』、『永遠の1分。』、『風が強く吹いている』、『ウルトラマントリガーエピソードZ』、ドラマ『仮面ライダー電王』、『仮面ライダー響鬼』などに出演。