外山文治監督×岡本玲【対談(前編)】「リハビリみたい」俳優の魅力をむき出しにする外山式ワークショップとは?

たまい支配人

“カメ止め”を産みだしたENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」第10弾として、映画『ソワレ』で知られる外山文治さんの監督・脚本にて映画『茶飲友達』の製作が決定。ワークショップ・オーディションにはプロジェクト過去最高の667名が参加。主演の岡本玲さんが「メンタルトレーニングみたいだった」と語る外山監督のワークショップの魅力を、外山監督と岡本玲さんに対談喫茶してきました。

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たまい:『茶飲友達』すごい盛り上がりですね!非常にユニークな本企画のことを今日は色々お聞きできたらと思います。まずは、本企画の成り立ちについて教えてもらえますか?

外山:自分はずっとオリジナルストーリーを作っているので、オリジナルを受け入れてくれる場所としてシネマプロジェクトには昔から興味がありました。今回、10周年記念作品を作るということでお話をいただいたのが始まりですね。

たまい:Youtubeで配信されている上田監督との対談動画を拝見しましたが、その中で第7回くらいの時もお声がけがあり、そのときは見送ったとおっしゃっていました。今回なにか心境の変化があったのですか?

外山:めちゃくちゃ真面目な話をすると、自分があと何本映画を撮れるだろう、と考えたんですよね。演出家としてのアンテナの波長が世間と合うのは40代、50代までだろうなという思いが自分の中にはあって、あと20年で何本撮れるんだろうと。昨年公開したオリジナルストーリーの『ソワレ』は合計3年かかっているんですよ。1本に3年かかるとしたら、長編映画は『ソワレ』で2本目なので、50代のうちに10本まで届かないんだなと。なので、お声がけいただけるのであれば、前向きにお話を聞いてみたいと思うようになりました。

たまい:年齢的に40代になられたことも大きかったんですね。

外山:大きかったですね。30代のまとめとして『ソワレ』をやったんですよ。40代に突入して新しいチャレンジを色々していきたいというタイミングで、このプロジェクトに挑戦するというのは面白いなと。

たまい:シネマプロジェクト恒例となりますが、ワークショップ・オーディションはどうでしたか?過去最高人数が集まったと伺っています。しかも、元々脚本ありきだったから、65歳以上の方も含めて募集をされたという稀有な例かなと思うんですけど。

外山:あれだけの人数の俳優さんにお会いする機会をいただけて本当に楽しかったですね。元々、ワークショップ自体が好きですし、稽古場の雰囲気みたいなものも好きです。そこで出会った人たちと映画を作れるだけでワクワクするのに、667名もの人が自分の作品に出たいと言ってくれた。もうそれだけで嬉しかったです。映画を撮るために、一人の出演者を探し出すだけでも必死な時代もあったわけですから。

たまい:岡本さんは参加してみてどうでしたか?

岡本:本当に楽しかったですし、つらかったです。笑

たまい:そうなんですね。笑
ワークショップではどんなことが行われたんですか?

岡本:2日間 各8時間のワークショップだったんですけど、3つくらいある課題台本をはじめはただひたすら交代で、外山さんが決めたペアでやってみるというのをずっと…。

外山:私のワークショップは普段なら12時間くらいやるので、個人的には短いと思ってました。笑

岡本:台本があまりないワークショップには参加したことがあって。でもそのときはゲームをしたりとか、まずはウォーミングアップから始まったんですけど、今回は初っ端から「みなさん覚えてきていると思うのでやりましょう!」と。

たまい:凄いプレッシャーだなー。笑

岡本:1回目はみんな緊張しているから硬くて、だけど何回も何回もやらせてもらっているうちに、自分がコンプレックスに思っていることを監督がポロっとおっしゃられたり、他の方に話している言葉が自分にもすごく響いたり、メンタルトレーニングという側面もあったように思います。

たまい:演技の癖みたいなことを指摘されるんですか?それとも内面性ですか?

岡本:癖とかではないですね。人間性?
役者として、表現者として、変なプライドとかカッコつけたりとかじゃなく自分の弱い所を受け入れる、というのをずっとやっていた気がします。

たまい: 16時間それを受けるのはなかなか嫌ですね。

外山:そんなことないですよ。いろんなワークショップがあって、いろんなディレクターがいるんですけど、俳優の存在を否定するところから入る人もいます。むしろ自分はリハビリのつもりでやっているんです。
本当はとても素晴らしい役者さんなのに、かつてそんな人にぶつかってしまったのか、どこか萎縮してしまっている方もおられます。理不尽なこともあるんですよ、ワークショップによっては。そういうところを一回フラットにしたい気持ちがあります。
だから、とにかく回数をやる。やっているうちに回復してくることもあるので、そこまで付き合いたいというのがありますね。

岡本:本当にそんな感じです。現場に行ったり、さまざまな演出家さんに会っているうちに、知らない間に「表現とはこういうものだ」みたいな、ちっぽけな固定概念ができてしまっていたりするので、それを細かく取り除いてくださいました。

外山:自己紹介で泣く役者が多いんですよ。

岡本:それはワークショップでもおっしゃっていましたよね。

たまい:自己紹介で泣くんですか?

外山:泣くんですよ。なんでかわからないんですけど、ご苦労があったんだなと。
そういうのを含めて萎縮している。無意識だとしても萎縮していると楽しくないじゃないですか。

岡本:役者って、みんな虚勢を張って生きていると思うんです。例えばオーディションに落ちるとかを何十回、何百回も経験してくると、傷ついていないフリはできるんです。でも、中はぐっちゃぐちゃで自信もなんにもなくなったりして。それを外山さんが引っ張り出してくれるというか、「虚勢を張らなくてもいいですよ、あなたはそのままでいいですよ」という雰囲気づくりの達人だと思います。

たまい:本当に「リハビリ」ですね。

岡本:そうですね。2日目に見違えるように素敵になった役者さんがいたり、逆に自信もってお芝居されていたのに1日目でむき出しにされて、ボロボロになって2日目に来るみたいな人もいらっしゃいましたよね。

外山:自分は助監督時代が少ないので、若いときにワークショップとか稽古場をいっぱい見させてもらったんです。蜷川幸雄さんや宮本亜門さんの聴講生としてワークショップに通ったりして。もちろん、その通りにモノマネはできないので自分なりにこうだよなと思ってやるんですけど。

岡本:オーディションに受かった人たちとも話をしたんですけど、2日目はやっぱり行きたくなかったと話していました。正直私も行きたくなかった。

外山:そうなの?

岡本:1日目で自分にはない魅力的なものをたくさん持っている方を見て、自分にはあるのかと自問自答して、「魅力って何だ?」と。考えてもわからないから、もうやるしかないなみたいな、そんな2日目でした。

外山:15分とかのオーディションだったら、もしかしたら上手く演じきって帰れることもあると思うんです。でも、全部はがれるまで付き合うからやっぱりしんどいと思うんですよね。「魅力って何だろう」もそうかもしれないですが、用意してきたものを見たいわけではなくて、その役者さんが持っているものが見たいので。

たまい:岡本さんがそもそもワークショップ・オーディションに参加したキッカケは何だったんですか?

岡本:私が中山求一郎君と自主企画したふたり芝居を外山さんが観に来てくださって、そのとき初めてお会いしました。それから外山さんの作品を拝見し、ワークショップに参加したいと思っていましたがタイミングが合わなくて。今回、ワークショップ・オーディションで映画を撮られるとお聞きして受けたいですと。

たまい:外山さんの過去作はどうでしたか?本人がいる前で聞くのもなんですけど。

外山:つらいなー…。

岡本:めっちゃ好きです。『ソワレ』で女優さんが露わになるシーンがあるんですけど、それが優しかったんですよ。どうしても同じ女優として観てしまうこともありますし、私はあまりそういうシーンは好みではないんですけど、ぜんぜん嫌悪感みたいなものがなくて、本当に作品の一部になっていました。日本の映画でそんな風に観られることがあまりなかったんです。きっと監督は人間のことが好きだろうし、諦めきれないんだろうなと思って、そこから短編もいろいろ観ましたし、外山監督の作品好きですね。

外山:まあまあとは言えないですよね。笑

岡本:本当に、単純に好きです。笑

外山:ありがとうございます。

たまい:よかったです。すみません、答えにくい質問をしてしまって…。
(後半に続く)

外山文治監督×岡本玲【対談(後編)】映画『茶飲友達』の異常な盛り上がりは映画宣伝を変えられるか?

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映画『茶飲友達』は制作応援サポーター・通称“ティーフレンド”を大募集中!12月30日までなので、お急ぎください!
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『茶飲友達』あらすじ
新聞の三行広告に小さく書かれた「茶飲友達、募集」の文字……その正体は高齢者専門の売春クラブだった。65歳以上のコールガール「ティーガールズ」に殺到する沢山の事情を抱えたシニア男性たち。そしてそれを運営するのは佐々木マナ(岡本玲)を代表とする社会に居場所のない若者達である。 ある日、スーパーで半額シールのついたおにぎりを万引きしていた国枝松子(磯西真喜)と出会ったマナは彼女を組織に勧誘し、人気売春婦へと仕上げていく……。

外山文治(監督・脚本・プロデューサー)
短編映画『此の岸のこと』が海外の映画祭で多数上映され、「モナコ国際映画祭 2011」で短編部門・最優秀作品賞をはじめ5冠を達成。長編映画監督デビュー映画『燦燦ーさんさんー』(東京テアトル)が「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。2017年、芳根京子主演『わさび』、吉行和子主演『春なれや』など、製作・監督脚本・宣伝・配給を個人で行う「映画監督外山文治短編作品集」を発表し、ユーロスペースの2週間レイトショー観客動員数歴代1位を樹立。2020年、豊原功補、小泉今日子によるプロデュース映画『ソワレ』(東京テアトル)を公開。「第25回釜山国際映画祭」【アジア映画の窓】部門に正式出品される。

岡本玲
1991年6月18日生まれ 和歌山県出身。女優。第 7 回雑誌『ニコラ』専属モデルオーディショングランプリを獲得し、デビュー。以後、ドラマ・映画・CM・舞台と多方面で活躍中。代表作にNHK連続テレビ小説『純と愛』『わろてんか』ドラマ『わたし旦那をシェアしてた』、映画『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでる』、『弥生、三月』、舞台『壁蝨』『熱帯樹』、『森フォレ』、『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』、『葉隠れ旅館物語』。2月には舞台『陰陽師 生成り姫』の上演を控える。

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たまい支配人 DOKUSO映画館 劇場支配人

DOKUSO映画館の劇場支配人。たまに映画プロデューサー。今年こそ、映画と読書と仕事以外の趣味をつくりたい。

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